過去最大の赤字額となった2018年3月期の決算から1年後、19年3月期決算では営業利益を大幅に回復させたリコー。18年4月にリコーグループの国内販売を担うリコージャパンのトップに就いた坂主智弘社長はこのV字回復の先に、オープンなプラットフォームビジネスによるさらなる成長を見据える。
複写機販売の効率を
維持したままコト売りに
――リコーの19年3月期の決算では営業利益が計画から上振れするなど好調でした。「リコー再起動」と名付けた近年のグループとしての改革が実ったということでしょうか。
17年4月に大きな方針転換を発表しました。モノづくりの会社ですので、市場の中での占有率を高くし、それを意のままに販売すべく直販を強化するといった取り組みはしてきたわけですが、右肩上がりの時代だったこの従来のやり方を続けるわけにはいかない状況になったわけです。メーカーのさがに囚われて、ハードウェアをたくさん販売するだけではお客様の期待に応えられなくなってきた。収益的にも厳しい時期でしたし、規模の拡大よりも質、利益を重視する方針に舵を切ったというのが大きなメッセージでした。そして、利益を出すためには当然付加価値を高めたビジネスをやらないといけないわけで、それができるようになってきたということだと思っています。
――グループの販売事業を担うリコージャパンが果たした役割も大きいわけですが、坂主社長の就任以来、この1年で取り組んできたことは。
リコーは中小企業のお客様に育てていただいたという歴史があって、その原点にもう一度立ち返りました。これは複写機事業の採算性改善という観点でも非常に意味があって、ディスカウント幅が大きく利益が出にくい大型案件よりも、中小企業向けにきちんとお役に立てる提案をしていくほうが採算性も高まるので、そちらの方向に針路を変えました。
――強みのある領域で顧客基盤を再活性すると。
さらにこれは前任の松石(秀隆氏、現リコー取締役CFO兼経営企画本部本部長)が打ち出して私も継続・強化している取り組みですが、スクラムパッケージのラインアップ強化と販売強化にも取り組んできました。
――スクラムパッケージはなぜそれほど重要なのでしょう。
当社の営業部隊に、モノ売りの販売手法ではなく、複写機を売るような効率を維持したままコト売りをやってもらおうというのがスクラムパッケージの狙いなんです。
――本来、顧客の課題を聞いて、それを解決するためのコト売りをするというのは結構手間も人手もかかりますよね。
そう、システムや課題解決の専門家がアカウント担当と一緒に客先を訪問して、というプロセスが必要になってくる。しかしそれではビジネスとしての展開力がありません。中小企業向けのビジネスとしてもフィットしづらい。ですから、ターゲットの業種を決めて、その業種について徹底的にお客様に教えていただいて研究し、その中で業務の普遍的な課題を抽出してその解決に役立つパッケージを、パートナーの製品とリコー製品を組み合わせてつくったんです。それがスクラムパッケージなんです。
――しかし、それでも複写機の営業担当が簡単に売れるものでしょうか。
まさに複写機のセールスが一人で売れるようにしたことがキモなんです。営業マンがお客様を訪問した際のスクラムパッケージの案件発生率を30%以上にする。そして3回以内に注文していただけるようなショートスパンなプロセスで課題解決できるようにチャレンジするという目標を掲げました。リコージャパンは全国津々浦々までリーチできる営業組織があることが大きな強みですが、彼らのコト売りを推進するためのキャンペーンをやったり、教育にも相当投資しましたし、とにかく販売経験を積ませるということを、この1年はとにかく力を入れてやってきました。その成果には大変手応えを感じています。
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