国内外でトップシェアのスキャナメーカーであるPFU。デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める富士通グループ内では、DXの“入り口”を担う会社として、得意とするスキャナやエンベデッドのビジネスを磨いていく考えだ。ハードウェアとソリューションサービスを組み合わせ、顧客の持つさまざまな課題の解決を支援する。半田清代表取締役社長に話を聞いた。
とがった技術を現場に届け
顧客の課題を解決する
――2018年4月に社長に就任されました。PFUはプロパーの方が社長になる印象でしたが、半田社長は富士通のご出身ですね。
確かにここ2代の12年間はプロパーが続きましたが、それ以前は富士通の技術畑の人が来ていたんですよ。私がPFUの社長になったのは、10年に富士通の100%子会社になってから8年が経ち、グループのガバナンスや連携を強化していく狙いがあるのだとみています。
私も若い時はキオスク端末の商談などでPFUと付き合いがありましたが、確かにここのところ、富士通本体との連携が薄くなってきているかなという気がしていました。そういう意味では、富士通は国内では最大の顧客ベースを持っていますので、お客様としっかり連携して、PFUもビジネスを拡大していくことが必要だと考えています。
――富士通は近年、“DX企業”となるべく変革しようとしています。そうした中で、PFUが富士通グループ内で担う役割とは何でしょうか。
まず、当社は今、スキャナ、エンベデッド、カスタマーサービス、ソリューションサービスという四つの大きなビジネスの柱があります。私がPFUに来て感じたのは、長年各分野で成長してきた人間が多く、事業構造が縦割りになっていて、横連携ができていないということです。PFUとはいったい何の会社なのかと言われたときに、それが何なのかがはっきりしないので、みんなが一つのところに向かっていけるビジョンをつくろうと、コーポレートビジョンを決めました。
それが「お客様の現場に価値を提供するエッジソリューションパートナーになる」ということです。「エッジ」には「現場」や「とがった」という意味があります。現場にとがった技術を提供できるパートナーになりたいという思いを込めています。
前置きが長くなりましたが、富士通は、どちらかというとお客様の基幹システムやクラウドなどのプラットフォームを提供していく会社で、そこからさらにDXへ進んでいこうとしています。一方、当社はアナログとデジタルの入り口、つまりスキャナなどを使った、現場におけるDXの入り口のところで、富士通と連携しながらビジネスをしていきたい。単にハードウェアだけでなく、ドキュメントソリューションやRPAなどを組み合わせながら、お客様の課題を解決していきます。
国内ビジネスは
まだまだ伸びる
――社長就任から2年ほどが経ちますが、力を入れて取り組んできたことは何ですか。
PFUに来て半年ほどが経った18年秋ごろに、社員向けに中期経営計画を発表しました。そこで掲げたことの一つが、得意ビジネスであるスキャナやエンベデッドを中心に、国内のビジネスをもっと強くしていくことです。そのために、各部門で分かれていた営業を一本化しました。
これまで、営業は先ほど言った四つの部門に分かれていました。すると、例えばエンベデッドの営業に、そのお客様先にスキャナは入っているのか、会議システムは入っているのかと、私が聞いても分からなかったんです。それが大ショックで。
ずっと営業をやってきた身として、営業というのはお客様に対して会社が持つ全ての商材を提案していろんなことを解決するものだと思っていたので、まずはそこを変えていこうと。そう簡単にはいきませんが、少しずつ変わりつつあります。
――現状のスキャナビジネスについてはどう見ていますか。
スキャナの売り上げは海外が9割で、国内は1割しかありません。ただ、海外もほとんどがディストリビューター経由での販売で、ハードの単体売りになっています。ここはもっとISVと連携したり、自分たちでもソリューションを付加したりして、強いものをさらに強くしていきます。
――国内市場はどうでしょうか。
国内はどちらかというと個人向け製品の「ScanSnap」が多く、売り上げの半分ほどを占めます。残りが「fiシリーズ」というビジネス系製品です。
このビジネス系の製品が、金融機関や保険会社を中心に利用されていますが、ほかにも使える業種があるのではないかとみています。
例えば、昨年発売したイメージスキャナ「fi-800R」は省スペースで、スキャンした原稿が手元に戻ってくる機能や、パスポートを読み取れる機能を搭載しています。これを窓口や病院・ホテルの受付など、ほかの業種の紙を処理している現場にももっと広げていくことができると。日本は紙の業務が多く市場はまだまだあると思います。
――「ペーパーレス」自体は世の中的にはかなり前からいわれていることですが、まだ十分に進んでいないと。
まだ十分に進んでいないとみています。当社のオフィスでも、5年前に移転した際にペーパーレス化を進め、紙文書を整理して廃棄したり、スキャナで読み込んで電子化したりして、紙を94%削減しました。このため、お客様がオフィスに見学に来られることがとても多く、年間300組以上が来られていて、関心はとても高いんです。
ただ、あくまで私の感覚ですが、今はどうしても「2025年の崖」でいわれるような、基幹システムを刷新する動きのほうがお客様の中では優先順位が高く、ペーパーレスなどは後回しになっている傾向にある気がしています。
事務所を移転されるお客様はそれに合わせて、という話になるのですが、既存のオフィスのままで全体のペーパーレスをやろう、というところにはなかなかすぐには進んでいないように感じています。
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