AWSは主軸であり続けるが
一本足ではない
――アイレットは依然として日本を代表するAWSの有力パートナーではあるものの、グーグル・クラウドのプレミアサービスパートナーにもなりましたし、「cloudpack」にも「Google Cloud Platform(GCP)」をラインアップしました。マルチクラウド化へのシフト傾向が目立つ印象です。
AWSを主軸に置くことを変える気はないんです。しかし、AWS一本足ではない。実際に、お客様のニーズは多様化しています。GCPもそうだし、Azureのニーズも高まっている。KDDIのクラウドインフラを活用した「KDDIクラウドプラットフォームサービス(KCPS)」もあります。シンプルに、お客様が使いたいというニーズがあるなら対応していくということです。
――メジャーなクラウドのニーズの違いについてはどう見ておられるのでしょうか。
大まかにですが、ゲームだとGCP、Windowsベースのシステムのクラウド移行ならAzure、それ以外の新しいことはAWSという感じですかね。
――AWSの有力パートナーのCIerには、AWS一本足を敢えて選択しているところもあります。
クラウドはすごい勢いで進化していますから、キャッチアップが簡単ではないのは事実で、マルチクラウドに対応するとなれば、さまざまな投資が継続的に必要になり、かなりの企業体力が求められるのも確かです。アイレットはKDDIグループとしてお金の調達がすごくやりやすくなりましたし、人的リソースの面でも増強しやすい環境になったのは強みだと思っています。
――新型コロナ禍で市場の先が見えづらくなっています。クラウド関連のビジネスには追い風という見方もありますが……。
まだアフターコロナの世界がどうなるかは分からないですよね。以前から発注いただいていた案件はともかく、7月以降に着手する予定だったものは止まっているのが現状です。正直、どういう手を打つかは決まっていないんですが、アイレットはインバウンドでたくさん引き合いをいただいてきた会社です。これまでなかなか引き受けきれなかった案件もたくさんあります。それを再度拾っていくのが当面重要だと考えています。いま遅れている案件も、新型コロナ禍の混乱の中で、お客様が意思決定の体制を立て直してくれさえすれば進むであろうものもたくさんありますから、それほど悲観してはいません。KDDIとのシナジーで顧客のデジタルトランスフォーメーションを支援する新たなビジネスも有望だと見ています。
――社長として設定されている目標はありますか。
目指したいのは「アイレットらしさ」を持った上で、市場を代表するSIer、CIerになるということです。伝統的な大規模ベンダーもクラウドの力は付けてきていますが、アイレットは“らしさ”を失わずに彼らの向こうを張れる存在になりたいと思っています。その意味で、財務的な安定などは基盤ができてきましたが、より信頼性の高い保守の体制構築などはこれからの課題ですね。
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長年理想のワイヤレスイヤホン探し続け、Padmate製PaMuブランドのイヤホンにたどり着いた。音質はもちろん、単体で10時間再生できることや装着感を高く評価している。テレワークで連続する遠隔会議のストレスも軽減してくれるという。
眼光紙背 ~取材を終えて~
いくつものパラダイムシフトを
経験してきた
携帯電話は新たな社会インフラとなり、通信キャリアのビジネスを大きく成長させる。そんな希望に燃えて第二電電(DDI)に入社した。間もなく「これからはケータイでインターネットの時代」という空気が醸成され、携帯電話を端末としてインターネットの可能性を探究する事業に携わるようになる。以降、モバイル通信によるコンテンツサービスを提供するためのプラットフォーム開発に従事してきた。「“ケータイでインターネット”の黎明期から超高機能スマホの時代まで、いくつものパラダイムシフトをサービス提供者側の立場で体験できた」ことは刺激的だった。
大手通信キャリア各社が商用サービスを開始し、いよいよ5G元年を迎えた2020年。KDDIグループの法人向けビジネスエコシステムの中核を成すクラウドインテグレーターであるアイレットのトップに就いた。5Gによりクラウドは新しい次元の価値を提供できるようになる。テクノロジーの革新とデジタルトランスフォーメーションの要請というビジネストレンドを踏まえ、法人向けITビジネスのパラダイムシフトをけん引していく。
プロフィール
岩永充正
(いわなが みつまさ)
福岡県北九州市出身。1996年、KDDI入社。EZweb向けブラウザーやauメーラー、着メロ、brew/Java、Wi-Fi、ID決済システムなどの開発を担当。携帯電話をインターネット端末として使い始めた時代から高機能スマートフォンの普及期まで、KDDIのコンテンツサービスを提供するためのプラットフォーム開発に携わってきた。2017年2月、KDDIがアイレットを買収、子会社化したことに伴い、KDDIバリュー事業本部からアイレットに出向、副社長に就任。20年4月より現職。
会社紹介
2003年設立。10年4月、クラウドの導入設計、運用・保守サービス「cloudpack」を開始。13年6月、野村総合研究所とともに国内初となるAmazon Web Services(AWS)のAPNプレミアコンサルティングパートナーに認定。有力なクラウドインテグレーターとして注目を集める。17年2月、KDDIの傘下に。19年7月にはGoogle Cloud パートナー プログラムのプレミアサービスパートナー認定を取得し、近年はマルチクラウド化に舵を切っている。従業員数は約500人。