“常識”を捉え直すきっかけに
――3社合併を発表したのは5月19日で、コロナ禍の緊急事態宣言が続く中での立ち上げでした。困難が伴ったのではないですか。
本来ならば合併に際して私が旧3社の役員と直接会って話をするのはもちろんのこと、北海道や沖縄の事業所にも出向いてコミュニケーションを深めていたでしょうが、この状況ですので、発足準備はほぼ全てオンラインで行いました。
正直、当初は「オンラインで本当に議論が深まるのか」と不安に思いましたが、蓋を開けてみると、まったく問題なく杞憂に終わりました。企業向けチャットツールやビデオ会議などの情報共有ツールをあれこれ持ち寄りながら、新会社立ち上げの議論は活発に進みました。デザインシンキングの手法で見かける、壁にアイデアを書いた付箋紙をたくさん貼り付けるやり方も、有志が集まってオンラインで実現しています。
ほかにも、対面ではちょっとした表情や仕草で伝えていた感謝の気持ちなんかも、オンラインでは対面とは違うやり方にしないと伝わりませんが、短いメッセージや絵文字などで感情を表現するやり方も根付いてきました。コミュニケーションを深める努力をみんなでしたのが印象に残っています。
――ウィズ・コロナの状態はしばらく続きそうですが、ビジネスへの影響はどうお考えですか。
移動の制約や対人距離の確保、三密を避けるなど不自由な状態ではあるものの、その不自由さを最新のデジタル技術を使ってどう解消するかのアイデアが生きてくるように思います。コロナ禍は大変不幸なことですが、“常識”とされていた事柄を考え直し、少しでもよい方向へ進むよう努力することはとても大切ですし、そのきっかけにするべきだと感じています。
当社自身、会社を立ち上げる際にさまざまなツールやアイデアを駆使してオンラインで議論を深められたのは、コロナ禍が起きたからこそという側面があるわけです。今となっては東京や地方といった場所に制約されることなく、各々が持つ業種の知見やスキルを共有したり、組み合わたりして価値の創造に努める動機づけが一層強まったたように思います。
これまで、当たり前だと疑いもしなかった作業も、新しいツールや技術、アイデアによって自動化できたり、オンラインに移行したりできる。3社合併によってより一段と視野を広げ、新しいことを学び取り、ユーザー企業とともにデジタル変革を推進していくパートナーとしてビジネスを伸ばしていきます。
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Goods
出会った人の言葉を書き留めるB5ノート。表紙裏には子どもたちが折ってくれた折り紙も挟んである。「たくさんの人に支えられて今がある」と感謝の気持ちを込めて、社会人になってからずっと言葉を書き留める習慣を続けている。
眼光紙背 ~取材を終えて~
視野を広げるには
リーダー役になること
駆け出しのSEだった頃、担当していたデータベースがうまく動作しない事象に悩まされた。何度もソースコードを確認したが問題はない。原因は他のシステムとの相互関係にあったが、「人に教えてもらうまでまったく分からなかった」と振り返る。
どうして分からなかったのか、当時、メンター役をしてくれていた職場の先輩に相談してみたところ、「目の前の仕事だけしか見えていないのではないか」と指摘された。視野を広げるためには「小さなチームでもいいのでリーダー役を担ってみるのがいい」とも。それ以来、積極的にリーダーに名乗りを上げるようになり、システムの前後関係や時間軸の全体像を捉えるよう努めた。
プロジェクト・マネージャーを任せられた頃から、ユーザー企業にとっての“価値”を最大化するにはどうすべきかを真剣に考え始める。これがとても難しく、業務的な知見はもちろん、ユーザーが属する業界動向まで学ぶ必要があった。新会社の日本IBMデジタルサービスにおいても、技術的な先進性はもとより業務的な知見や、業際的な広い視野を持って、「ユーザー企業の価値創造につなげていきたい」と抱負を語る。
プロフィール
井上裕美
(いのうえ ひろみ)
東京都生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業。2003年、日本IBM入社。システムエンジニアとして官公庁のシステム開発を担当。11年、官公庁デリバリー部長。19年、ガバメント・デリバリー・リーダー。20年、日本IBMグローバル・ビジネス・サービシーズのガバメント・インダストリー理事。同年7月1日、日本IBMデジタルサービス代表取締役社長に就任。日本IBMの執行役員を兼務。
会社紹介
日本IBMデジタルサービスは、旧日本IBMサービス、旧日本IBMソリューション・サービス、旧日本IBMビズインテックの3社が合併して7月1日付で発足した。営業部門こそ持たないが、ITアーキテクトやERP製品のコンサルタントなどの上流工程から運用保守まで一気通貫で担う規模のメリットや、幅広い業種ノウハウを強みとする。