枯れた商品を再び花形にする
――オンライン商談ツールはとても時勢に合った商材ですが、まさかコロナ禍への対応で開発したわけではないですよね。
さすがに違いますよ(笑)。もともと遠隔地にあるパソコンの画面を参照するリモートアクセスのパッケージ商材があり、ここで得た知見をベースに「RemoteOperatorシリーズ」を開発しました。同シリーズは、本来の用途のリモートアクセスはもちろん、ほかにも例えば金融機関の申込書類で、銀行のオペレーターが顧客の画面を見ながら、書類の記入方法を助言するといった用途にも使っていただいています。RemoteOperator Salesは、RemoteOperatorシリーズの中のオンライン商談の機能を切り出して商品化したものです。
また、コロナとは関係ありませんが、24年にNTTの電話網がIP網へと移行することに伴い、従来型の電話回線を使ったEDIをIPベースのものに移行する需要も増え、当社EDI製品の「Biware」もよく売れています。
――パッケージソフトのメーカーは、ヒット商材をいかに生み出すかで業績に大きく差がでそうです。
いま花形の商品でも、時間とともにしおれて枯れていきますので、そこからいかにまた花を咲かせられるかが腕の見せどころです。リモートデスクトップは昔からある古い商品ですが、ここで培ったノウハウを応用すれば、オンラインサポートやオンライン商談ツールとして、再び花形商品に仕上げることができるのです。ゼロから商品をつくることも素晴らしいですが、既存の資産を新しいビジネスのネタとしてフル活用していくことも大切です。
全く新しい商品をつくるにしても、枯れた商品を再び花形に仕上げるにしても必要なことは同じです。役員はもちろんのこと、企画や営業、開発、サポート、管理など社内の全ての部署の従業員が新商品を生み出すプロセスを理解して実行し、若い世代に伝えていくことが「インターコムの品質」となり、「ヒット商品をつくり続けること」につながります。この姿勢をしっかり浸透させていくことが社長としての私の最も大事な仕事だと思っています。
Favorite
Goods
イタリアのゲラルディーニのバッグを愛用している。収納力が抜群でバッグを二つ持たなくても済むことや、色の選択肢が多い点が気に入った。「男性っぽい黒や茶色は好みでないし、派手すぎない青系統から選んだ」とのこと。
眼光紙背 ~取材を終えて~
粘り強く、ハッキリ言って、人を動かす
現在、インターコムの売り上げの7割が月額課金を基本とするクラウド系の商材に移行している。さかのぼること18年前、「サービスに課金する方式へと軸足を移さなければ先が見えない」という須藤美奈子氏の訴えを受け、創業者の高橋啓介社長(現会長)が「須藤さんに任せる」と決断してビジネスモデルの転換に踏み出したことが大きなターニングポイントになった。高橋会長が「粘り強く、言いたいことはハッキリ言って、人を動かす」と評する須藤氏に社長を任せることを決めた背景には、そんな記憶も影響しているのかもしれない。
「ヒット商品のアイデアや品質について気になった点があったら、私は何度でも話をするタイプ」(須藤氏)。あっさりしているようで、こだわるべきところは「でもでも……」と食い下がる。しまいには相手が根負けしてしまうことも。クラウド系の商材比率も、こうやって粘り強く増やしてきた。
2022年に創業40周年を迎える。「ヒット商材を継続して生み出し、品質をより高めていくサイクルを着実に回していくための枠組みを、しっかりつくっていく」。製品の品質だけでなく、インターコムという会社の品質も高め、「50周年、100周年を迎えられる企業」を目指す。
プロフィール
須藤美奈子
(すどう みなこ)
1984年、インターコム入社。96年、台湾支社に赴任。マネージャーとして製品開発に従事。01年、帰任。07年、取締役。20年6月29日、代表取締役社長に就任。
会社紹介
インターコムは1982年に創業。パソコン通信世代なら誰でも知っている「まいと~く」ブランドを冠する「まいと~くFAX」は、POSデータに基づいてシェアナンバーワンメーカーを表彰する「BCN AWARD」最優秀賞を20年連続で受賞。このほか、IT資産管理「MaLionシリーズ」、オンライン商談システム「RemoteOperator Sales」、シリーズ累計24万本の販売実績のEDI(電子データ交換)「Biware シリーズ」などを開発・販売。千葉県南房総市にインターコムR&Dセンターを置いている。