サービス型プロダクトを充実させる
――今後、注力する事業を教えてください。
われわれのビジネスの中核はSIですが、これは今すぐではないにしろ、いずれ成長には限界が来るものと考えており、プロダクトをもっと強くしていくべきだと考えています。従来もプロダクトへのシフトを強化したタイミングがありましたが、一気にはできませんので、SIを維持しつつ、強みとする領域でSaaSなどサービス型のプロダクトに徐々に軸足を移していきたいと思っています。
先ほど言いましたように、ストックビジネスというのは事業環境の変化にも強いので、そうしたビジネスをいかに積み上げていけるかは重要な経営課題です。お客様に受け入れていただくためには品質を相当強化していかなくてはいけないですし、社内でもマーケティングを含めてもっとしっかり体制を整えなければならないなど、ビジネスモデルを変えていく上での挑戦が多々あります。少し時間はかかるかもしれませんが、やり遂げたいと考えています。
――以前にもプロダクトにシフトした時期があったということですが、そのときとの違いは何でしょうか。
鈴木(良隆)社長の時代に、強みとなる特定業種向けのビジネスを「ライジングゾーン」として強化し、すでにホテルや図書館、バス会社向けに強みとなるソリューションを持っています。これをもっと拡大できるのではないかと考えており、強い業種領域をさらに増やしていくとともに、業種向けアプリケーションをSaaS型で提供してストックビジネス化していくことが従来とは異なる点です。ホテル業界向けサービスや一部の例外を除けば、まだまだオンプレのビジネスが中心ですので、そこをクラウドサービスにシフトしていくことがこれから目指すところです。
――団(博己)前社長は、AIやRPAといった新しいテクノロジーへの取り組みに力を入れておられましたが、その方針は引き継がれますか。
継続して取り組んでいます。特にRPAに関しては、NECのRPAももちろん担いでいますが、ブループリズムのパートナーとしてビジネスを展開し、アワードもいただいています。ここにはかなり力を入れており、今後も変わることはありません。
AIについては、まだまだ知見を溜めている状況です。NECとも連携しながら少しずつAIを組み込んでいく取り組みを行っており、お客様に提案するだけでなく、社内業務でもAIをもっと活用できるところがあるのではないかと思っています。冒頭にお話ししたとおり、データはかなり蓄積されているんです。例えばセールスのあり方やソリューションの作り方の仮説を立てる上でも、AIをうまく活用できるのではないかと考えています。
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「AccessNotebook」というノートを5年ほど前から愛用。「このノートを使うと不思議と頭の中を整理できる」そうだ。全てのページに番号が振られ、かつインデックス付きで後から検索しやすい点もお気に入り。すでに20冊近くも利用している。
眼光紙背 ~取材を終えて~
社員が誇りを持って働ける組織文化に
NECは近年、国内グループ企業のトップの若返りを図っている。そうした流れの中で、NECネクサソリューションズの社長に就いた。「変化の激しい時代の中でスピード感をもってチャレンジするところに、若い力が期待されているのかなと思う。自分自身、どんどんチャレンジしていきたい」と意気込む。
目下、力を入れるのが「社員が輝ける環境づくり」。同社が掲げる、「顧客に満足と感動のサービスを届ける」という目標を実現するためには、まず社員自身が仕事に対して誇りや、やりがいを持てるようにする必要があるとの考えからだ。実際に現場の声を聞くべく、8月末から社員との対話会を開始。1回当たり1時間半、リモートを含めて20~30人が集まり、意見を交わす。合計で80回程度実施する見込みだ。
これまで社員と対話してきた中で、「非常に高い志をもって仕事をしてくれている一方で、余裕のなさのようなものも感じる」という。社内にイノベーションを起こしていける組織風土があるべきと思っているが、そうした環境にはなっていないと実感したという。
本業以外の部分で社員が成長できる機会や交流できる機会をつくるべく、リーダーシップを執る考え。「社員自身が輝ける、やりたいことができる環境をつくっていくことが私の役割」と話す。木下新社長のチャレンジはまだ始まったばかりだ。
プロフィール
木下孝彦
(きのした たかひこ)
1968年生まれ、静岡県出身。90年、国学院大学経済学部を卒業後、NECに入社。2008年、神奈川支社医療営業部長。14年以降、南関東支社長代理、東北支社長代理、四国支社長代理、南関東支社長を歴任。19年4月、NECネクサソリューションズの執行役員。執行役員常務を経て、20年4月より現職。
会社紹介
1974年、NECの情報処理データセンター本部から分離独立し、日本電気情報サービスとして設立。2001年にNECグループ5社が合併し、現社名になった。09年以降、NECグループの東名阪地域の中堅企業顧客を担当。製造・流通などの民需や官公庁、自治体など幅広い顧客に対し、システムの企画から開発、構築、保守、運用サポートまで含めてワンストップで提供できることを強みとする。19年度売上高は795億円、従業員数は1940人(20年7月1日現在)。