「HCL」といえば、インドのITサービス大手として知られ、日本法人もエンジニアリング開発サービスを核として、大手製造業を中心に日本企業のビジネスを20年以上にわたり支えてきた。そして今、新たな挑戦として、コーポレートIT分野でのプレゼンス向上へ本腰を入れ始めた。その先頭に立つ中山雅之社長は「IT人材の枯渇という問題に対する答えの一つとして『インド』を提案したい」と意欲を見せる。日本でのビジネス拡大に向けた基盤構築へ。これまでのキャリアで培った法人向けITの知見をフルに生かす構えだ。
(取材・文/藤岡 堯  写真/大星直輝)

──社長就任の経緯をお聞きします。

 エイチシーエル・ジャパンはエンジニアリングが強いのですが、デジタル(コーポレートITサービス)はそれほど強くありません。HCLテクノロジーズはそこに注力し、もう一度立ち上げ直す、もっと大きく成長させるためにカントリーヘッドを探しており、私にも話が舞い込んできました。

 日本ではIT人材の枯渇という課題がかなり強く謳われています。今に始まった話ではなく、10年ぐらい前からある話ですが、より厳しさを増している状況です。解決手法はいろいろあるのでしょうが、(人材の)絶対量が足りないので、まずは海外を使わざるを得ないと思っています。その答えの一つとして「インド」がやはりあるんじゃないかと私は思っていました。
 そこに、HCLが日本市場で積極的に投資し、これまでの2倍速で取り組むという話があり、「面白いな」と感じました。HCLに対しても、日本のお客様に対してもお役に立てると思ったのが、(オファーを受けた)理由の一つです。

世界のテクノロジーセンター

──なぜ、インドが解決方法になるとお考えでしょうか。

 まずは(人材の)キャパシティーが圧倒的ですよね。それから、10年、20年前と比べて、会社が大きく変わってきています。例えば、HCLの社員数はグローバルで20万人いますが、そのうちの半分以上は北米の仕事をしています。そして、その次がヨーロッパです。欧米だけで70~80%を占めるわけで、いろいろなものが蓄積されています。

 スマートフォンだったり車だったり、さまざまなものに組み込まれるソフトウェアは、ほとんどがインドで作られています。黒子のような存在ですが、蓄積されたものはすごい。今や世界のテクノロジーセンターだと思います。やはりそれを活用しない手はないでしょう。日本のIT人材が枯渇する中で、コストが低く、テクノロジーセンターであるインドを活用しなければいけないと本当に思っています。

──組み込みソフトウェアなどの部分ではインドの実力は浸透しているようにも感じますが、コーポレートITの分野においては、広まっていないように見えます。

 そうですね。だからこそ、大きなポテンシャルがあると思っています。伸ばしていくために、デジタルではグローバルの実績をアピールしていきたいと考えます。

 例えば、ある企業がERPソフトウェアをグローバルで運用したいという話があるとします。そこでポイントとなるのが、グローバルの各リージョンにガバナンスが効く子会社があるかどうかです。HCLはグローバル企業として本当にガバナンスが優れています。各リージョンの子会社を動かすことで、グローバルロールアウトを成功に導くことができます。センターのガバナンス、リージョンのガバナンス、どちらもしっかりやることは実は難しいんです。

 もう一つ利点があります。われわれの特徴はオフショアにあります。グローバルロールアウトでも全てオフショアで手掛けます。もちろん、現地でリージョンごとに要件を取りまとめて、マネジメントをしますが、実行者はオフショアです。同じオフショアセンターの同じ人たちが全てのリージョンをカバーすることで、開発面や運用面での標準化・統合化が図られます。

 例えば米国で取り組んで成功したもの、失敗したものがたくさんあります。その知見はオフショアに溜まります。もちろん現地にも人員はいますが、そこで何か問題があっても、オフショアからチェックができます。本部から各リージョンへのガバナンスと、オフショアからのガバナンスの双方が効くので、われわれはグローバルの案件に強いのです。