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顧客にとっての価値をすべてのビジネスの起点に

NEC 取締役代表執行役社長兼CEO

森田隆之

取材・文/大畑直悠 撮影/大星直輝

2024/01/15 09:00

森田隆之

週刊BCN 2024年01月15日vol.1998掲載

 NECはここ数年、DX共通基盤「NEC Digital Platform(NDP)」の整備・活用や、上流コンサルティング体制の強化に力を入れている。今後の成長の中核に据える「コアDX事業」では、オファリングを拡充しており、森田隆之社長は「顧客や社会への価値とインパクトを起点にしなければならない」と話す。個別開発や製品ありきの提案から、顧客価値をベースとしたビジネスへの転換を目指す考えだ。
(取材・文/大畑直悠  写真/大星直輝)

データドリブン経営の取り組みが進展

――2021年度以降、コアDX事業を成長の中心に据える戦略を推進されてきました。国内企業のDXの進捗について、どのように見ていますか。

 DXの本丸は、データのあり方も含めて基幹システムを見直すことです。一方で、投資のプライオリティの問題もありますが、コストがかかったり効果が見えづらかったりすることから、基幹システムは塩漬けにしたまま、カスタマーエクスペリエンスのような、即効性のある領域での取り組みが中心に進んでいるように感じます。しかし、例えばRPAのように、特定のプロセスそのものを変えることなく、機械化によって効率化するやり方には、一定の限界があります。

 そうした中で、基幹システムと業務プロセスそのものを変えなければいけないと覚悟を決めた企業が、徐々に現れてきているのが現状だと思います。これは生半可にできるものではなく、長期にわたる変革になるので、まだまだ主流にはなっていないでしょう。

――NECでも社内のDXとして、基幹システムの刷新と業務プロセスの標準化を進めています。現場からの反発もあるかと思いますが、どのように取り組まれていますか。

 構想から実行まで2年ほどかけて、ウォークスルーも事前に2回実施し、端末などにおけるシミュレーションのトレーニングもしましたが、23年5月にフェーズ1としてリリースした受注管理のプロセスはシステム上だけで完結させることができず、第1四半期は一部を手動で処理して乗り切りました。第2四半期でようやく全件に対応できる状態になりましたが、現場からは「何のためにやっているのか」「自分たちは楽になったわけではない」という声がありました。

 それを踏まえ、課題を収集し、例えば少額案件に関して簡易的なプロセスを導入するなど、相当丁寧に対応してきました。また、QA対応や現場支援、プロセスやルールを見直すチームをつくったり、アジャイル型の開発対応として集めた要望に優先順位をつけたりしました。その結果、プロセス変革の対応に関わる時間や、クレームの数は激減しています。

 システム刷新でいかに会社がよくなるのかを実感できることが重要なので、各案件の状態や売り上げ、利益の情報を確認できるようにする“経営コックピット”をリリースし、これを使った戦略や施策の実行も回り出しています。同時に、多くの社員がアクセスできるようにしており、現在は67の情報テーブルを開示し、データを活用可能にすることの意義を社内に浸透させています。

――データの可視化だけでも簡単ではないと思いますが、データドリブン経営の実現という点では、可視化したデータを意思決定や施策の実行に活用することが求められます。

 それはまさに各マネジメントにやってもらわないといけません。新たな基幹システムはNEC本体だけでなく、24年度には最大の子会社であるNECソリューションイノベータにも展開する予定です。これにより、SI型のプロジェクトは連結で一貫して中身が見えるようになり、データを事業に生かす効果をより実感できるでしょう。

 また、NECの生成AIを活用し、施策をレコメンデーションする仕掛けをビルトインすることを検討しています。生成AIの活用に関しては社内でマーケットプレイスを作り、生成AIを使ったアプリケーションやプロンプトを共有し、みんなで使えるようにすることで活用を加速させています。
この記事の続き >>
  • パートナービジネスにもNDPを適用
  • 顧客への提供価値をオファリングに翻訳する

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外部リンク

NEC=https://jpn.nec.com/