通信障害発生の危険性を論拠とする携帯電話事業者からの強い反対意見により、その採用が阻まれ続けてきた超広帯域高速無線規格に米連邦通信委員会(FCC)の認可が下りる公算が高まった。米国ブロードバンド市場全体に激震をもたらしかねないこの超広帯域高速無線規格が、今年の台風の目になりそうな雲行きとなってきた。

 超広帯域(ultra-wideband)と呼ばれるこの新規格は、昨年9月11日の米同時多発テロにより崩壊したニューヨーク国際貿易センターの瓦礫跡における被災者探索作業のために、FCCが時限的な民生利用を認可したものだ。

 交信には微弱な短波を利用するので、端末の存在と移動、およびその交信内容を敵に捕捉される危険性が低い。しかも、局が全端末の位置情報を一義的に把握できる。国防や警察関係では既に多くの運用実績がある技術として、10年以上も前から専門家の間では知られていたものだ。

 携帯電話から衛星無線に至るまで、広範な無線通信帯域全般を利用できることから、携帯電話や無線などの民生事業者から、その採用に対して強い反対意見が出ていた。

 しかし、低消費電力型であり、かつ弱電波消費型であることから、既存無線環境との干渉障害に対する危険性への懸念はないとするFCCの判断が明らかになってくるにつれ、巨大な無線新市場が一気に創出される公算が高まってきている。

 もともと軍・警察関係に採用されてきた技術であるために、通信内容の暗号化対策は万全となっている。さらに、特定の地点にある端末しか特定の交信に参加できないという規制が可能なために、ハッカーによる傍受がほぼ不可能だ。

 FCCは、当面は局地的利用への認可を進める方針だ。具体的には、家庭内超高速無線LAN、空港、ショッピングモールなどの地域限定型超高速無線ISP事業である。

 超広帯域対応製品の軍・警察への納入を既に進めている企業の1つであるタイムドメインでは、この新技術の核となるマイクロチップの生産に特化して行く方針を明らかにしている。

 インテル、ソニーなどが早くもこの新技術に対応した製品の開発を目指しており、早ければ今年中には超広帯域対応の新製品が市場にお目見えすることになりそうだ。

 とくにソニーは、家庭内超高速無線LAN環境構築の決め手として、この新技術を積極的に採用して行く方針だ。プレイステーション2を端末とした無線ブロードバンド環境の構築を支援し、テレビのセットトップボックスと連携した多彩な音声画像情報の提供を狙っているようだ。

 全米では既に1100を超える零細定額無線ISP事業者が、限られた地域に無線ブロードバンドの提供を進めているが、この超広帯域技術がこれらのISP活動との連携を深めていくと、より廉価、高機能、高品質な高速無線ブロードバンドのネットワークが全米に張り巡らされることになる。(大平 光)