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オフィス用カラープリンタ市場 高性能・低価格競争が激化 プリンタメーカー、戦略機種を相次ぎ投入

2003/12/01 19:39

週刊BCN 2003年12月01日vol.1017掲載

 オフィス向けカラープリンタ市場が激震に見舞われている。セイコーエプソンが、カラー毎分10枚/モノクロ毎分40枚という高速出力で低価格(19万8000円)のレーザープリンタを投入。リコーは8万9800円という低価格で毎分8.5枚の出力が可能なジェルジェットプリンタを発表。各メーカーによる高性能・低価格競争に拍車がかかっている。オフィス向けカラープリンタの主導権争いは新しい局面を迎えることになりそうだ。

 電子情報技術産業協会(JEITA)の調査によれば、カラーページプリンタの2002年国内出荷台数は15万台という。

 出荷台数は伸びてはいるものの、その伸びは鈍く、業界の期待を下回る状態が続いている。

 「カラーが必須」な市場では順調に普及しているものの、その市場規模はそれほど大きくなく、新市場として「あれば便利」と考えている層に対し各プリンタメーカーは働きかけてきた。だが、その潜在需要を掘り起こせていないというのが02年までの市場環境だった。

 しかし、今年に入ってプリンタメーカー各社の出荷台数は30%台で成長しており、国内市場で20万台乗せが見えてきた。

 業界関係者によれば、「あれば便利と考えている層が本格的に買い始めたというよりは、メーカーの用途提案で新しいカラー需要の発掘に成功しつつある」という。

 プリンタメーカー各社の戦略を見てみると、「あれば便利」と考えているユーザーにアプローチをかけてきたのはキヤノンとセイコーエプソンだ。

 一方、業種・業務を細かく分析し用途提案に力を入れ、「カラーは必須」な市場の拡大に取り組んできたのがリコー、富士ゼロックスプリンティングシステムズ、NEC、カシオ計算機、沖データなど。

 もちろん、各社とも両方の需要層をターゲットにしてはいるが、ウェートのかけ方が戦略の違いを際立たせていた。

 そうした中で今回リコーが打ち出したのは、「あれば便利層」に対しての本格的なアプローチとなる高性能低価格品だ。

 リコーは以前から、オフィスで使われているインクジェットプリンタの台数は予想以上に多いとの見方をとってきた。その根拠として、調査会社の市場調査による120万台という数字をあげている。ユーザーは経営者層や管理者層、SOHOなどで、価格もこなれ、手軽に使えることから民生用として販売されているインクジェットプリンタを導入して時々発生するカラー需要に対応しているという。

 新製品では、こうした民生用インクジェットプリンタのユーザーに照準を合わせ、印刷スピードが速く、にじみもなく、ビジネス用途に最適な点を強調しながら拡販を図る。

 リコーによれば、ジェルジェットプリンタは基本的にはインクジェットプリンタに属しているが、それをさらに発展させた技術という。カラー毎分8.5枚の上位モデル(イプシオG707)が8万9800円、同7枚の下位モデル(同G505)は5万9800円。

 これまでは、こうしたインクジェットプリンタ使用層に対しては、A4レーザープリンタ、LEDプリンタなどでアプローチするメーカーが多かったが、機械コストやランニングコストの高さ、機械本体の大きさなどから、必ずしも軌道に乗ったとはいえなかった。

 「あれば便利」層へのアプローチとして、もう1つ注目されるのはセイコーエプソンの動きである。A3カラープリンタ「LP-9000C」を19万8000円という戦略価格で発売した。

 同機はフォーサイクル機で、カラーは毎分10枚、モノクロは毎分40枚。時々カラーが必要というユーザーに照準を合わせ、モノクロプリンタからの買い替え促進を狙う。

 同社はこれまでモノクロ毎分40枚機を49万8000円(LP-9600S、両面印刷機構搭載)で販売してきたが、機能と使い勝手を継承しつつカラー機構を搭載して20万円を切った製品を投入した。

 リコーの場合は、底辺層拡大にとりあえず照準を合わせているが、セイコーエプソンの場合は本格的な業務用途でのモノクロプリンタからのリプレースを狙う。

 「あれば便利」というだけの需要層へのアプローチは明らかに新局面を迎えつつあり、これに取り残されると生き残るのは厳しくなっていきそうだ。
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