米国の大都市はどこも財政赤字に苦しんでおり、ニューヨーク州はその代表である。そこで、税収の増加のために好況を続けるIT産業がターゲットになっている。しかし今回の税制改革は、自州以外のオンラインショップがその主たる対象となったために、この業界にに大きな波紋を呼んでいる。

 米国の春は納税時期であり、企業も個人も面倒な会計処理に悩まされる。そして今年度以降、ニューヨークではオンラインショップの今後に影響を及ぼしかねない税制の変更が行われ、これが同業界の大きな懸念事項となっている。この改訂は、簡単に言えば、これまでオンラインショップでは消費税が事実上免除に等しい状況であったものを、今後はきちんと申告の上、納税をしなければならないというものだ。

 米国では、税率や課税対象やその額などが州ごとに制定されている。従って、同じ店で同じ日に同じ商品を購買した場合でも、購入者の居住地や宅配先などの違いで課税額に大きな違いが生じることは珍しくない。これまではオンラインショップはもちろん、米国で長い歴史のあるカタログ販売での購買にこの様な税金の「抜け穴」が存在することは広く一般に知られており、それを利用することで価格的なメリットが発生することが、彼らの存在意義の1つであった。

 しかし、赤字に悩む州政府や地方自治体が、これらの抜け穴を無視し続けるには、その市場はあまりにも大きい。特に消費税が高いニューヨークでは、高額な家電などを購入する際に、隣接するニュージャージー州に住む知人による代理購入や、オンラインショップの利用が日常的に行われており、結果としてこれらの購買で発生する莫大な税収を失ってきた行政側の対応策が今回の制度改革である。

 今回の改訂は、実際には申告用紙に新たに追加された、消費税分の項目を記入する欄の追加に過ぎない。つまりその税徴収方法は、これまで同様個人の自己申告が前提で、具体的な実効性はかなり低いといえる。しかしこのような施策が既成事実となれば、今後さらに厳しい改訂も十分可能となる。例えばアマゾンを始めとするオンラインショップの大手に査察が入り、購入者のリストが国税局の資料となれば、脱税が指摘されても言い逃れができなくなるケースも出てくるだろう。

 これまでオンラインショップ業界は、利便性や低価格、迅速な納品や品揃えの豊富さと、オンラインならではのメリットを生かしながら順調に成長してきた。しかし今後は、客単価が上がるほど、客自身に一層のしかかる各種の税金が成長の足かせになっていくだろう。

 しかも税収不足に悩んでいるのは大都市だけではない。今後は大都市以外の多くの自治体が追従すると見られている。近い将来オンラインショップは新たな冬の時代を迎えるかもしれない。(田中秀憲)