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グーグル流IPO、秘密主義守る 四半期予測はなし

2004/05/24 20:47

週刊BCN 2004年05月24日vol.1040掲載

 史上最短の創業6年にして通算売上10億ドルを達成した検索エンジンのトップ、グーグル(米カリフォルニア州マウンテンビュー)がIPO(新規株式公開)に踏み切る。落札者に検索キーワードを売るビジネスで知られる同社だけに、IPOもネット競売の独自システムを作るなど、その斬新な方法でウォール街を驚かせている。

「短期目標に気を取られる経営陣は、1時間ごとに体重計に乗るダイエット実践者と同じぐらいピントがずれている」。申請書類に添えた書簡でラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏の創業者コンビはこう述べ、上場後も四半期予測を行わないと、異例の方針を明らかにした。

 株は内部と一般向けの2クラスに分け、前者には一般の10倍の議決権を与える。創業者コンビが全株式の30%を持つ現状では「強権的」との批判も出たが、手法自体はコーポレートガバナンスを守る常套手段だ。報道の自主性を重んじる米マスコミ業界などではよくあるスキームだ。

 気になる売り出しは、得意の競売システムを使い“ダッチオークション”で行う。「より多くの人に平等に配分」(創業者)するのが狙いだが、成功例が皆無な手法だけに実践にはかなりのリスクも懸念される。

 ネットバブル崩壊後初、1998年のイーベイ上場以来の大型IPOとあって、上場はかれこれ4年も前から「今か今か」と囁かれてきた。期待が頂点に達した4月末、米各紙には「ビッグバン」、「第2次ネットバブル?」、「シリコンバレー復活」などの見出しが並び、申請前1週間だけでグーグル関連記事の国内メディア登場回数は621本に達した(LexisNexis調べ)。

 とにかく秘密主義のグーグル。売上高も社員数(1000人のはずが実は1907人だった)も正確な数字は今回のIPO申請書類を見て初めて分かったという冗談のような話のところにきて、この数学マニアなIPO計画である。取り引き銀行が割り当て分を得意客に売っていればよかった従来型IPOとは大きく趣きを異にする。

 グーグルは98年、上記2名がスタンフォード大学大学院在学時にガレージで興した。社名の「GOOGLE」は1にゼロを百個並べた数学用語「GOOGOL」のモジリ。その名の通り、シリコンバレーの数学オタクたちが額を突き合わせて作った検索マシンが最大の武器だ(特許は同大学に11年に移管予定)。IPOにも社風がモロに出た。収入の95%は広告で、世界検索市場のシェアは43%。近年はヤフー(30%)を離し首位を独走している。

 今年予想収益は5億6180万ドルで前年度比68%増。四半期利益からヤフーと同率の81倍で算出すると会社の評価価格は455億ドル、イーベイの69倍だと388億ドルである。IPOで会社は一夜にして数兆円規模の大企業となり、創業者コンビらトップ3人はビリオネアに、社員約30人がめでたくミリオネアとなる。(市村佐登美)
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