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米ヤフー、ハリウッドとの連携強める ネットと放送の融合目指す

2005/03/28 21:35

週刊BCN 2005年03月28日vol.1082掲載

 ヤフーの米国本社がハリウッドとの連携を強化している。テレビ、映画関係者を重役に招き入れているほか、ハリウッド近郊に授業員約1000人を収容できる大規模オフィススペースを確保した。インターネットと報道の融合が進むなかで、米ヤフーは新しいタイプのメディア企業として生まれ変わろうとしている。

 米ヤフーのサイト上にはこのところ、映像系のコンテンツが増えている。

 昨年は大統領選挙の年ということもあり、政治風刺のコンテンツが大流行した。なかでもフラッシュアニメ制作のベンチャー企業JibJab Media(ジブジャブメディア)の「ディスロード」は、ブッシュ、ケリー両候補の特徴を良くつかんだ風刺アニメで、1000万人以上のネットユーザーが視聴したといわれる。

 この視聴率の高さに目をつけたヤフーはジブジャブと提携。新作2本の独占配信契約を取得した。この2本はジブジャブのサイトからもアクセスできるが、アイコンをクリックするとまずヤフーのサイトに飛び、そこからフラッシュアニメが起動する仕組みになっている。

 ヤフーはまた、大手テレビ放送網NBC放送の人気番組「ジ・アプレンティス」のホームページの製作、運用の受託に成功している。同ホームページはヤフーのサイト内に設置され、サイト内の各コーナーから簡単にジャンプできるように設定されているほか、その週の番組の見所場面の映像クリップや出演者のコラム、視聴者が今後の展開を予想するゲームなど多彩なコンテンツが用意されている。

 受託前はNBCが同番組のホームページを作成、運営していた。そのホームページは今でもネット上に残っているが、それよりもヤフーのつくったホームページの方が圧倒的に内容が濃い。

 この番組は、米不動産王のドナルド・トランプ氏に、視聴者から選ばれた十数人が弟子入りするというもの。毎回、事業プロジェクトが弟子たちに与えられ、失敗すれば同氏からクビを宣告される。同氏の「You are fired(クビだ)!」という言葉は流行語になっており、ヤフーはその音声クリッピングをインスタントメッセージングサービス上で利用できるようにしている。また、同番組の視聴者はビジネスに興味のある人の割合が多いとみられるため、人材募集のコーナーなどヤフーサイト上のビジネス関連サービスにジャンプしやすいデザインになっている。

 単なる番組宣伝のホームページではなく、ヤフーのサービス全体との相乗効果を狙っているようだ。

 こうしたメディア部門の責任者として昨年11月にヤフーに招かれたのがロイド・ブラウン氏。大手テレビ網ABC放送からの転職組だ。同氏の指揮の下、ヤフーはますます積極的にメディア事業に注力していくことになりそう。

 ヤフーには同氏以外にもテレビ、映画業界経験者の重役が多数在籍している。最高経営責任者(CEO)のテリー・セメル氏も2001年の就任前は映画会社大手ワーナー・ブラザーズの共同CEOだった。同氏はヤフーに移籍するにあたって元部下を中心に多くのハリウッド関係者をヤフーに引き連れてきている。

 一方ブラウン氏率いるメディア部門は、ハリウッド近郊のサンタモニカ市の大規模オフィススペースをレンタルすることを決定。このオフィススペースは「ヤフーセンター」と命名され、約1000人がそこで勤務することになるという。

 当面は、テレビ、映画のコンテンツを加工してヤフーサイト上で利用可能にすることが業務の中心になるが、反対にヤフーサイト上のコンテンツをテレビで利用できるようにもしたいという。

 このためセットトップボックスやHDD(ハードディスクドライブ)搭載DVDレコーダーなどのメーカーと交渉をしているもよう。具体化すれば、経済ニュースの番組の放送中に、ヤフーファイナンスに登録してある所有の株式の銘柄の株価速報などの情報をテレビ画面に表示させることなどが可能になるという。

 またヤフーはビデオの検索技術も持っている。テレビ上でビデオ検索を可能にすれば検索連動型広告をテレビ上で展開することも可能になるとみられている。

 米ヤフーのメディア戦略はいよいよ反転攻勢の時期に差し掛かりつつあるようだ。(湯川鶴章)
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