オンラインショップの大手、米アマゾンが新しいサービスを開始した。ネットショップ最大の弱点である送料の課金方式を大胆に変更しようとするこの試みは、しかし同社自身が経営を圧迫することを認めるほどにリスクの多い選択だ。経営岐路に立たされるネットショップ大手の起死回生策となるのだろうか。

 オンラインショップの大手アマゾンが開始した新サービスが話題だ。3月早々に開始されたこのサービスは、定額の年会費75ドルを支払い会員になれば、何度注文を繰り返しても送料は無料というものである。アマゾンはこれまでも25ドル以上の購買や、特定のキャンペーン商品などには送料を無料にしてきた。しかしこのサービスの会員になれば、少額の購買を何度繰り返しても送料は無料。その結果、会員はアマゾンでの購買が増えることが期待されている。

 これまでは少額の注文時には送料が割高になるため、購買をためらう消費者も多かった。今回の新サービスは、1人が加入すれば、その会員の家族もこのサービスを同様に受けることができる。より幅広い消費者の確保が期待されるとともに、アマゾンのなかでもあまり回転が頻繁ではない分野の商品群の活発化も期待されている。この新サービスはオンラインでの購買回数が多い顧客ほどメリットが大きいことから、全ジャンルを扱うアマゾンならではのサービスといえるだろう。

 オンラインショップの最大の課題は、梱包および発送業務だ。かつてイートイズという大手の玩具オンラインショップがあった。ここは1999年のクリスマス商戦期に発送関係のトラブルが多発したため、その翌年に大規模な配送センターを自社で用意した。しかしその経費を賄うほどの売り上げを実現できずに倒産してしまった。

 それほどまでに発送関係に関してはどのオンラインショップでも重要な課題だ。オンラインでショッピングをするユーザーの大半は緊急に必要ではないものや、運搬が面倒なものをネットで購入し、それ以外の一般的な購買は実店舗で済ませる傾向がある。送料は購買回数ごとに加算されるため、ユーザーの多くがまとめ買いをするなどの自衛策を採っている。

 オンラインショップは他州からの購買時の消費税課金がなく、利用者にとってはそれも魅力である。しかし遠方からの注文や少額商品の場合は、送料がかかってしまい、消費税がない分のメリットをそいでしまうことも多く、この点では実店舗を持つ競合他社に関してオンラインショップは分が悪い。また専門分野を扱うオンラインショップであれば、顧客は商品を入手できること自体に魅力を感じるため、送料の加算が購買に影響しないことも多い。

 この新サービス開始と同時に発表された同社の決算数字は、クリスマス時期の売り上げ増もあって大幅な収益増だった。しかし他社の急追でシェアは低下、さらにはアナリストたちの予測数字からもやや期待はずれであったとされ、結果的に株価は下落。またこの新サービスもしばらくは経営資源を圧迫すると考えられており、次期四半期の利益は大幅に減少する可能性が高いことを同社自身が認めている。

 これらのことから浮き彫りになるのは、米アマゾンは目先の利益よりも長期的な展望にたったうえで、他社からの顧客の取り込みや、現在の顧客のより積極的な固定化に躍起にならざるを得ないということである。

 今やあらゆる分野の商品を幅広く扱う米アマゾンは、実店舗を持つクリックアンドモルタル型の競合他社や、購買そのものは個人売買が基本となるイーベイなどに対する何らかの独自対応策が必要とされていた。また実店舗を持つ競合他社の中には、オンラインショップは実店舗とは全く違った品揃えにし、新しい客層を開拓しているところもあるなど、各社ともオンラインショップにおけるマーケティングには試行錯誤を続けている。

 オンラインショップが出現したころは、実店舗を持たないことこそが最大のメリットとされ、その後には逆にそれがデメリットとされてきた。発送業務の問題は、今後も各社が様々なアイデアで他社との差別化を図ろうとするだろう。米アマゾンの一手は消費者のみならず業界中の注目を集めている。(田中秀憲)