【上海発】国外から見ると、中国のパソコンソフトウェア市場は、Linuxに代表されるオープンソースソフトウェア(OSS)と関連して語られることが多い。これは、中国政府がサポートしていることが理由かもしれない。では、その実態はどうだろうか。

 まず、政府からサポートを受けることが、中国でOSSが発展する最も有利な条件であることは間違いない。名高いLinuxディストリビュータを例にすると、Redflag Linuxを開発している「北京中科紅旗軟件技術」は中国科学院に所属しており、また、NewShine Linuxを開発している「上海中標軟件」も国営企業だ。このほか、OSSに関わる大企業の多くが政府とつながりを持っているようだ。OSSの開発は、国家安全、産業独立など国レベルの命題に関わるもので、政府から高い支持を受け、重視されているわけだ。政策上の優遇措置、資金のバックアップなどサポートを受けている場合もあるだろう。

 OSSを巡る最近の動きとしては、昨年6月9日に上海市情報化委員会の組織の下で「上海Linux産業推進合同会議」が設立され、同7月23日には、情報産業部の斡旋でLinuxディストリビュータやシステムインテグレータからなる「中国開源軟件(OSS)推進連盟」の設立が宣言された。今年になり、5月10日には情報産業部ソフトウェアと集積回路促進センター(CSIP)の発起で「中国Linux産業連盟」が北京で設立された。6月15日に開催された第9回中国国際軟件博覧会において、「中国開源軟件推進大会及び開源応用成果展覧会」が、中国開源軟件推進連盟やCSIPの主催で行われた。これらの活動を見ると、Linuxを中心とするOSSの研究が活発に行われていることが分かる。

 これらのアライアンスは、異なるLinuxディストリビューションのインターオペラビリティ(相互運用性)を高めることが目的である。国際的にも、中国、日本、韓国におけるLinuxの標準化を目的に、「北東アジアOSS推進フォーラム」が開催されている。昨年7月28日に第2回会議が札幌市で開催され、3か国の政府やオープンソース推進団体の代表が、OSSの活用状況やオープンソース推進活動の報告を行い、日中韓の協力計画は順調であることを強調した。なお、3か国の企業が合同で「Asianux(アジアナックス)」というLinuxディストリビューションを開発しているとのことだ。

 一方、中国におけるOSSの普及活動は、諸外国と比べると、ボランティア開発者コミュニティでなく、企業が主体になっていることが特徴だ。数社の国営企業か政府を後ろ盾に持つ企業が、LinuxなどOSSやオフィスソフトの開発において、リソースなどの優位性を持っており、企業規模、マーケットシェアなどの面ですでに先行している。

 こうした状況で、OSSコミュニティがあまり存在しないことは致命的な問題だと思う。J2EEアプリケーションサーバーを開発しているHuihooコミュニティの名前を最近よく耳にするが、ここにしても資金、人的資源のどれもまだまだ欠けている。世界から注目を浴び成功を収めるまでは長い道を歩くことになるだろう。

 開発ボランティアの欠如も悩ましいところだ。今は急発展中の時代であって、技術者らは自分たちの生活のためだけに奔走している状況なのではないかと思う。だが、OSS事業は最終的に、大きな夢と情熱を持ち、奉仕精神を持ちあわせた数多くのボランティア開発者たちのサポートが必要なのだ。

 現在、中国におけるOSSはLinuxがメインであり、アプリケーションはさほど重要視されていない。理由として、①基礎となるソフトウェアの開発に力が入れられている、②ソフトウェアを応用するレベルが比較的低い──ことが挙げられる。

 今後、企業の情報化プロセスが進むとともに、アプリケーションの重要性も見えてくるだろう。なお、近年Java/ウェブアプリケーションの応用が進むにつれて、中国のソフトウェア開発者の間で、Apacheプロジェクトの影響が増加しつつある。このことは、OSSアプリケーションの普及に追い風となるだろう。一部のソフトウェア開発会社のなかでは、CVS(Concurrent Versions System)、JakartaおよびStruts、Springなど、GNUやApacheに由来する開発ツールやアプリケーション、Javaフレームワークのようなソフトウェアの普及が今後、注目されると考えられている。

 最後に、産業として見た場合、OSS産業のチェーンはまだできていないと思う。OSS開発コミュニティをサポートする財団があまりない。冒頭であげたOSS開発企業は助成金などを得ている一方、ソリューション提供やシステムインテグレーションなどの業務から利益を確保している。しかし、民間からの投資は不足しており、企業で使用できるOSSアプリケーションはほとんどない。携わっている人数も少なく、スケールメリットはまだ現れていない。これらの問題点はOSSの中国での発展を制約している。
魏鋒(ウェイ・フェン=ACCS上海事務所担当)