【上海発】米半導体大手のAMD(カリフォルニア州、ヘクター・ルイズ会長兼CEO)が10月24日、中国科学技術省との覚書に調印し、省電力x86アーキテクチャに基づくGeode組み込みマイクロプロセッサの設計技術を、北京大学マイクロプロセッサ研究開発センターに移転した。これは中国、米国間において歴史上、最も影響力のある技術移転と評価されているという。

 AMDのx86省電力マイクロプロセッサは、シンクライアントコンピュータ、シングルボードコンピュータ、パーソナルネットワークコミュニケーションデバイス、ネットワークストレージ、デジタルテレビレシーバとセットトップボックス、リモコンなど多岐に用いられている。GeodeはAMD第7世代マイクロプロセッサカーネルが採用されており、第8世代のOpteron/Athlon64およびダブルカーネルバージョンと比べればギャップがあるものの、それでもかなり先進的な技術だと言える。

 「中国のビジネス、個人生活における生産性を根本的に変革させるものだ。この重要なライセンス契約は、どのような環境下でも人々のニーズを満たすAMDの業界標準技術へのビジョンを前進させ、AMDの存在を中国の研究開発機関と成長著しい市場に対して明確にする」と馬頌徳・科学技術省副大臣は語った。

 覚書によると、AMDは中国科学技術省と協力することで、成長続く中国の集積回路産業の設計、開発能力を向上させる。一方、中国は「make x86 everywhere」を標榜するAMDをサポートし、全世界でx86マイクロプロセッサの応用市場をさらに開発していく。実は2年前に、AMDのルイズ会長兼CEOは中国にx86コア技術を移転する構想を提示していたが、米国の技術輸出規制があり、両国政府機関とのコミュニケーション、交渉、斡旋の長いプロセスを経て、今回の技術移転にたどり着いた経緯がある。

 中国市場を狙うAMDは、売り上げの90%を海外に依存しており、中国市場はこのうちの4分の1を占めている。米国における9月の市場調査では、デスクトップ製品市場と消費者向け製品市場で競争相手のインテルを超えるシェアを得ているという。

 「いま、中国は世界の消費製品の中心となっている。現在協力しているx86技術分野は高いポテンシャルを持っている。組み込みソリューションはもっと広く応用できるし、コアテクノロジーを移転することで促進される中国のデジタル化プロセスは、私たちのためにもなるだろう」とインタビューでルイズ会長兼CEOは答えた。

 同日、ルイズ会長兼CEOは取締役全員を率いて、北京でグローバルボードミーティングを開いた。「中国はAMDにとって特別な意義がある。重役達に中国における仕事を実感して欲しい。次はどう推進すべきか、どのような機会があるか、どのような問題を解決しなくてはいけないのかを考えて欲しい」と述べた。

 AMDは、正式にAMD大中華区(Great China Region)本部を中国のシリコンバレーと呼ばれる中関村サイエンスパークに開設し、24日にAMD取締役および北京市政府の代表はテープカットを行ってスタートを宣言した。同本部は大陸のみならず、香港、台湾での業務も統括する。

 中国が省電力・組み込みx86技術を手に入れたのは、チャンスだとの見方が主流だが、政府へのPRに過ぎないという意見もある。ただ、世界のエレクトロニクス生産工場となっている中国で、付加価値の高いIA(Intelligent Application=デジタル家電)をつくるには、コンピュータプロセッサより組み込み系プロセッサの方が有意義。目的はともかく、やはり中国にとっては、省電力・組み込みx86技術の使用ライセンスを得るメリットは大きいのではないだろうか。
魏鋒(ウェイ・フェン=ACCS上海事務所担当、shanghai@accsjp.or.jp)