【香港発】アジア通貨危機などの後遺症に長年苦しんだ香港だが、2004年1月に発効した香港と中国本土間の自由貿易協定「経済・貿易緊密化協定(CEPA)」により、中国市場への橋頭堡としての地位が高まっている。ICT(情報通信技術)やRFID(無線タグ)など香港が得意とする先端分野の企業誘致に向け、来年1月には計5か所の研究開発センターも開設する予定だ。香港の最新投資事情について、香港特別行政区政府香港投資促進局のジョン・ラザフォード局長代理に聞いた。

 ──香港経済の現状は。

 香港はいま上昇気流にある。その理由は中国本土が元気なことにある。1997年に英国から中国に返還された際、政府協定として中国政府が防衛、安保、外交などを担うことになったが、ビジネスは英国法の支配下に置かれる1国2支配制にあり、IP(知的財産権)の保護に向けた規制は非常に厳しい。(中国のWTOへの加盟で)日本を含め多くの企業が中国市場に目を向けているが、チャンスがある半面、リスクも高い。この点、香港を拠点にすれば、企業は香港の法の支配を享受しながら、インターナショナルな環境も活用できる。香港は海外から中国本土に入る際のゲートウェイでもあり、中国企業が海外に出る際の拠点ともなっている。現在、香港に進出している日系企業の数は米国に次いで2番目に多いが、その大半が香港市場のみならず、中国本土の市場を視野に入れている。

 ──香港投資促進局の役割について。

 香港政府の一部署ではあるが、官僚的な要素は持たず、スタッフの約7割を民間人で構成している。北京政府とは直接関係はなく、経済的に自治権をもってやっている。現在東京、大阪を含め世界20か所に事務所を持ち、香港に投資意欲のある企業を探し、直接話し合うのが我々の役目。香港の本部は業界別に組織が設けられ、このうち私はテクノロジー部門を担当している。テクノロジー部門は3つのチームに分かれ、1つがIT系を網羅するチーム、2つ目が通信・マルチメディアのチーム、それに半導体を含む精密・エレクトロニクス機器に特化したチームで構成している。

 ──香港に事業拠点を置くメリットは。

 国際的な企業が香港をアジア地域の本部として機能させるモデルや、04年1月に発効した「CEPA」を活用するモデルが考えられる。「CEPA」の発効で、香港の商品、サービスを中国本土に持っていく際に関税がかからなくなるなど、優遇的措置が受けられるようになった。香港はロジスティックスが洗練されており、本土に進出するうえでの利点も多い。ファイナンスにしても香港の方が収益を日本に還元しやすい。中国政府は収益を中国で再投資して欲しいと思っているであろうし、人民元を外貨に変える時、官僚的な手続きも必要だからだ。

 ──香港は位置的に華南地域と結びつきが強いのでは。

 華南地域は投資として良好なエリアであり、日本のテクノロジー系企業が多く進出している。77年に経済特区となった深センなど、我々としては工場を華南地域に置き、マネジメントを香港から行うことを推奨している。華南地域でビジネスを行ううえで香港は最も適した場所であり、深セン、広州、東莞など珠江デルタの市場は大きい。また、香港は金融サービスセンターとして規模が大きく、こうした金融業界にソフトを提供する中小企業にもチャンスが残っている。香港にパートナーを見つけることができれば、次に深セン、上海の金融サービスセンターにも進出することができる。

 ──金融のほかにソフト開発で有望な分野は。

 第3世代(3G)携帯電話のアプリケーション開発が有望だ。香港では6社ある通信事業者のうち4社が3Gサービスを提供しており、これら企業はもっと多くのアプリケーションを求めている。3Gのアプリケーション開発は日本が先行しており、日本からアプリケーションを持っていくチャンスでもある。最近、中国本土のオペレータが香港の会社と提携を結ぶように動いており、本土で3Gサービスが決定されればまた香港は優位に立つ。

 ──進出企業に対する支援策で新たな動きは。

 ICTやRFIDなど、香港が強みをもつ5つの分野それぞれに研究施設をつくることになっており、来年1月1日から運営が始まる。資金は政府が出すが、運営は民間組織の「ASTRI(アプライド・サイエンス・テクノロジー・リサーチ・インスティチュート)」が担当することになっている。ASTRIの拠点は香港サイエンス&テクノロジー・パーク内にあり、現在約250人のリサーチャを抱えているが、これを数年間で700-800人に増やす予定でいる。運営が始まる5つのセンターでは、大学、研究施設、企業に誘致を働きかけ、商品の開発拠点やセンター内の他の企業との共同開発拠点として機能させてもらえればと期待している。

(香港投資促進局のウェブサイト=www.investHK.gov.hk