【サンフランシスコ発】いま米国で話題なのが、無料インターネット接続サービスだ。とはいっても、一時期ブームとなった「ライブドア」のように、広告表示の代わりにインターネット接続を無料にするサービスではない。地方自治体がITインフラ整備の一環として、無料のインターネット接続環境を市民や旅行者に提供するものだ。

 11月中旬、米西海岸のカリフォルニア州マウンテンビュー市において、米Googleが申請していた無線LAN(Wi-Fi)による市内の無料インターネット接続サービス提供プランの発表が行われた。マウンテンビューは、IT企業集積地として名高いシリコンバレーの中心に位置するのどかな丘陵地帯で、Google自身が本社を置いている土地でもある。

 Googleの計画によれば、市内の街灯などに無線LANのアクセスポイントを設置し、屋内外を問わずに無線LAN経由でPCや携帯機器のインターネットへの接続を可能にするというものだ。屋内では電波が弱くなるため、屋外にあるアクセスポイントの電波を拾って増幅する装置の有料提供も検討に入れているという。

 設置やサービス維持にかかるコストはGoogleが負担するとしているが、同社サービスの利用増加や位置情報を基にした新規サービスの提供なども計画しており、それで採算をとろうとしている。もともとマウンテンビュー市自身が無料インターネット接続の導入を検討していたこともあり、話が進んだものと考えられる。

 同様の無料インターネット接続提供サービスを検討しているのは、マウンテンビュー市とGoogleが初めてではない。同年8月には、マウンテンビューからほど近いカリフォルニア州サンフランシスコ市も、同様の市内無料インターネット接続サービスの提供計画を発表している。

 これは10月に実際に承認され、提供事業者の選定に移っている。インフラ整備には何社ものIT企業が名を連ね、自身の設置プランを提示しているが、その中にはGoogleの姿もあった。同社の計画はマウンテンビューのときと同じ、要所にある街灯に無線LANアクセスポイントを設置し、市内全体を無線インターネット対応するというものだ。

 また著名な例として挙げられるのが、米東海岸にあるペンシルベニア州フィラデルフィア市である。同市はプロバイダ企業大手の米EarthLinkと共同で無線LANアクセスポイントを電柱等に設置し、同市内135平方マイル(約346平方キロメートル)全体をホットスポット化しようとしている。そしてそのインフラを市民に無料開放しようというのだ。

 上記3市以外にも、全米のあちこちの都市で無料のブロードバンド・インフラ整備計画が持ち上がっている。無線LANを使ったものもあれば、TV放送やビデオ・オン・デマンドなどの提供も視野に入れて、光ファイバによる超高速インターネット環境を用意しようというところもある。いずれにしろ共通するのは、これまで完全に業者任せで積極的な関与を行ってこなかった地方自治体が、自らインフラ整備に乗り出そうとしていることである。

 こうした動きは、利用者側にとっては非常に歓迎すべきものだ。他国の水準と比べても高い50-80ドルあまりのブロードバンド接続サービス利用料を払って、ADSLによる1.5Mbps接続やCATVによる4Mbpsサービスを利用していたのが、すべて無料になるからだ。

 無線LANで無料インターネット接続が提供される場合、外出先での接続も可能になる。これは、たまたまその都市を訪れた旅行者にとっても大きなメリットになり、外から人を呼び込み、市の産業を活性化するための材料としても機能する。

 だがこうなると面白くないのが、有料で同種のサービスを提供してきた既存事業者だ。高いインフラ投資を行って環境をようやく整備したのに、そのビジネスチャンスをそのまま無料サービス事業者に奪われてしまうことになる。

 実際、前述のフィラデルフィア市のケースでは、米電話事業者大手のVerizon Communicationsがすぐに抗議の意見書を出している。こうした問題は、今後他の市にも波及することが予想される。

 マウンテンビュー市はいったんGoogleの計画推進を認めたものの、外部の圧力で計画を撤回する可能性もあると、各方面で指摘されている。いずれにせよ、既存事業者との共存をどのように図るかが、米国での自治体による無料インターネット接続サービス成功の鍵を握っているといえる。
鈴木淳也(ジャーナリスト)