【北京発】赤字続きではあるが、半導体ファウンドリーとしては中国でトップ、世界では第3位の売り上げを誇るSMIC(中芯国際集成電路)は今年6月末、地理的にはちょうど中国の中央にあたる湖北省の武漢市に、同社として3番目の300ミリウエハー製造拠点の建設に着工した。その背景にあるものは…。

 SMICは巨額の減価償却に足を引っ張られて赤字続き、そのうえ上海市の300ミリ工場もまだ建設中だ。

 にもかかわらず、SMICはなぜ新たなクリーンルーム投資に踏みきったのだろうか。今回の投資はあくまで地元の湖北省政府と武漢市政府が設立した「武漢新芯集成電路製造有限公司」によるものだから、厳密にいえばSMIC自身の投資ではない。といっても経営・管理は「新芯」の委託を受けてSMICが行い、工場の所有権も一定の時間が経てばSMICに移ることになっているのだから、やはり同社のプロジェクトだといってもいいだろう。

 武漢の湖東新技術開発区に建設される300ミリウエハー製造拠点の背景について同社の張汝京(リチャード・チャン)CEOは7月、業界メディアのインタビューでこう語っている。

 「メモリとロジック製品を量産している北京の300ミリ工場は現在、キャパシティをはるかに上回るオーダーを抱えている。1社だけでウエハー2万枚/月という顧客もあるほどだ。SMIC北京としては今年の目標を2.6万枚/月にまで引き上げたが、それでも注文の3分の1程度にしか応じきれていないのが現状だ。だから武漢の工場は着工したばかりであるにもかかわらず、もう注文が入ってきている」

 SMIC北京のクリーンルームはすでにフルキャパ状態であるうえに、完成してもいない武漢がすでにオーダーを獲得しているというのだ。

 いまや世界のウエハー製造は300ミリが主流だ。しかしなんといっても半導体は典型的な「カネ食い」産業であり、いったん最先端クリーンルームを保有すれば、同じく最先端の微細加工技術を追いかけ続けなければならない。これはつまり、長期間にわたって大勢のプロセス技術者と多額の資金を投下し続けなければならないことを意味する。果たしてSMICにはそんな体力があるのだろうか。そのあたりについてリチャード・チャンCEOはこう述べている。

 「設備の減価償却は今年の第4四半期から徐々に減り始め、上海の償却は2008年末までに70-80%が終わる。収益は相対的に上向いていくことになるので、今年は利益をだせるだろう。加えていまは上場以外にも多様な資金調達の方法があるので、様々なルートで資金を確保できる。品質・歩留りはもとより、キャパ自体も上げていけば、いくらでも投資してもらえると思っている。だから資金的な問題はないといってもいい」

 「半導体製造技術は日進月歩だが、これまで5年間にわたる教育を通じてSMICの人的リソースの質は確実に上がってきており、研究開発能力も飛躍的に向上していることは間違いない。私たちが独自に開発した90nm(ナノメートル)のロジックプロセス技術が顧客の信頼性評価に合格したことはそれを何よりもよく物語っている。65ナノの技術についても、最初は非常に苦労したが、現状は極めて良好だ」

 信頼性試験で合格をもらった顧客とは、日本唯一のDRAMメーカー、エルピーダメモリのことだ。SMICにとって、エルピーダは最重要クライアントなのである。

 一方で同CEOは、微細加工技術では世界の最先端をいくエルピーダなど海外の半導体大手との差は縮小しつつあるという認識を示しており、彼によれば、「0.13μ(ミクロン)では3-4年の遅れだったが、90ナノで1年に縮まり、65ナノレベルでは、おそらく6-9か月程度の遅れ」まで縮小するという。(サーチナ総合研究所 森山史也)