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中国 憶測呼ぶ中国語IME紛争 「谷歌」、「捜狐」ともシェア拡大?

2007/06/11 21:40

週刊BCN 2007年06月11日vol.1190掲載

【上海発】 インターネット検索大手グーグルの中国現地法人である「谷歌」(www.google.cn)は4月4日、中国語IME(Input Method Editor)「谷歌ピンイン」を無償でリリースした。

 中国語の入力には、「発音」(ピンイン)、「字形」、「手書き」という3つの方法がある。名前の通り、谷歌ピンインは発音によって入力するもので、ほかのIMEに比べて機能が高いうえ、検索機能が付いていること、検索エンジンにユーザーが入力することによって登録される最新の単語までを網羅した言語辞書である。

 谷歌社の公式発表によると、このユーティリティを投入した目的は、グーグルブランドの認知度を引き上げるとともに、ユーザーにグーグルの製品・サービスに馴染んでもらうことだとしている。

 確かに、ダブルバイトである中国語のユーザーにとって、最も利用されているソフトは、IMEに間違いないだろう。この動きは、中国におけるグーグルのローカライゼーション戦略の重要な一環とされる。

 その後で行われたWeb調査の結果によると、回答者の6割以上のユーザーは谷歌ピンインに切り替える意思を示したようだ。

 しかし、この谷歌ピンインに疑惑の声が出てきた。「捜狐IME」のまねで、辞書も盗用しているとブログで指摘されたのだ。捜狐IMEとは、インターネット総合ポータル「捜狐」(www.sohu.com)の中国語IME製品で、市場に出て間もなく大人気を博した。

 捜狐は4月8日に「権利侵害の事実を確認したうえで、辞書を無断使用した谷歌社の行為に対して権利侵害の差し止め、さらなる行動を取る権利を保留する」と発表した。

 これに対して谷歌社の担当者は、「β版のなかの谷歌ピンインのデータは100%グーグルオリジナルではない」ことを認め、その個所はすでにクリーンにしたと説明した。その後、ネット上では二派に分かれ大騒ぎになった。グーグルファンの弁解によると、捜狐の説明にはなんら信憑性はないと強調し、不満をあらわにした。

 この事件は、いつも注目されているグーグルに絡んでおり、ネットにとどまらずペーパーメディアでも数多く報道された。

 中国におけるグーグルは、マーケットシェアは高いが、トップの百度(www.baidu.com)には及ばない。露出度を高めてシェア引き上げを図ることが、捜狐、谷歌の共通の目的ではないか、との見方もある。

 さらに、この両社の動きがショーなのではないかと怪しむ声もある。彼らに言わせると、両社は巧みに計画したうえで、この事件を作り、ユーザーの注目を集めることを目指したという。いずれにしろ、この事件を経て、IMEのインストール率は2社とも高まっていることは確実である。
魏鋒(ウェイ・フェン=ACCS上海事務所所長、shanghai@accsjp.or.jp)
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