緊張感の演出と勘ぐる向きも

【ソウル発】三星電子は業務効率を高めるため9月から出退勤時間を弾力的に運用するフレックス勤務制を拡大し、本社スタッフにも適用すると発表した。フレックス勤務制は時差の解消から研究所、海外営業部門ではすでに実施されていたが、一般スタッフでも部署別に自律的に導入できるよう適用対象を拡大することになった。

 韓国のマスコミが「フレックス勤務制は三星電子の新経営2.0の第一歩」と報道しているのに対し、三星電子は「業績悪化後のリストラや新経営戦略の一環としてフレックス勤務制を導入したわけではなく、あくまでも効率を高めるための制度。また義務的に実施されるわけでもなく部署別に自律的に判断して適用する。本社スタッフでも営業部は代理店の営業時間に合わせて勤務するのが効率的であるため、フレックス勤務制を拡大させようとしている」と説明した。三星電子の就業時間は現行8時から17時までとなっているが、これを業務状況に合わせて9時-18時、10時-19時などに変えられるようになった。

 10時から16時までは集中勤務時間として「コアタイム帯」、この時間帯の前後は「フレキシブルタイム帯」にして、部署長と協議し各人が業務計画に合わせて就業時間を自主的に選択できるようになった。

 三星グループは1993年、李健煕会長の「新経営宣言」により、交通渋滞を避けて社員の時間活用を有効にするため、7時出勤16時退社の「7・4制度」を導入したことがある。16時には退社して自分のために時間を活用できるという初期の目的とは違い、出勤時刻が早くなっただけで16時に退社できる人はほとんどいなかった。上司が残っているのに自分だけ帰れないといった理由から逆に残業が増えただけだとする社員からの苦情もあり、01年末からは8時出勤、17時退社に変え、業務効率化のために必要と認められた事業部はフレックス勤務制を導入してもよいことになった。9年間続いた7・4制度は三星グループの雰囲気を変えた。今でも7時には会社に到着するよう出勤する人が少なくない。会社の出勤バスも朝5時からソウル各地の住宅街を回るので、満員電車に揺られるよりは会社の出勤バスを利用しようと早朝から出勤を急ぐようになったせいだ。

 三星グループが93年に発表した新経営宣言のように、今回もフレックス勤務制で会社の雰囲気を一新させ緊張感を与えようとしているのではないかと分析する経営専門家も多い。

 フレックス勤務制の導入は韓国で珍しい制度ではない。すでに食品やエンターテインメントを中心とするCJグループをはじめ大手企業に導入されつつある。05年からは「公共機関弾力勤務制」が導入され、政府省庁と公企業、地方自治体などでも施行されている。

 一方、政府は国家エネルギー節約の一環として夏の間、標準時より1時間操り上げるサマータイム制を導入しようと積極的に検討を続けている。政府は9月末まで公聴会と効果分析を実施する。労働界は「出勤時刻が1時間早くなるのに定刻には帰れず、勤務時間が増えるだけだ」と反対している。
 趙章恩(チョウ・チャンウン=ITジャーナリスト)