ワーナーの方針転換が分岐点に

 東芝がHD DVD事業を終息すると発表した。東芝の西田厚聰社長は、「これ以上、HD DVD事業を継続すれば経営に大きな影響を及ぼし、複数規格が併存することによる消費者への影響も出る。競争の観点からも、もはや勝ち目はないと判断した」と、事業終息の理由を語った。

 西田社長は、「HD DVDの愛用者、パートナー企業を考えると苦渋の決断」としながらも、「技術、コスト、利便性という点では、この時点においても、HD DVDが優位という自信に変化はない。だが、理由やプロセスはどうあれ、市場環境の変化を直視し、変化への対応策を速やかに講じる必要がある」と語った。

 終息の流れを作ったのは、今年1月にワーナー・ブラザーズが発表した、ブルーレイ・ディスク(BD)へ一本化するとの方針転換だった。「1991年から資本提携関係にあり、HD DVD規格を一緒に作り上げてきたワーナー・ブラザーズの方針変更によって環境が大きく変化した。まさに寝耳に水だった」と振り返る。これを受けて、ベストバイやウォルマートといった北米小売り大手が、相次いで販売をBDに絞り込むと発表したことが決定打となった。

 東芝によると、日本におけるHD DVDプレーヤーの販売台数は約1万台、レコーダーが約2万台。全世界の累計ではプレーヤーが70万台。HD DVDドライブ搭載のパソコンが30万台のほか、Xbox 360向けHD DVDドライブが約30万台と想定している。「HD DVDドライブの累計出荷は約200万台になる」という。

 今後、同社では継続的にサポートを行う方針を明らかにする一方、ドライブの生産を終了。BD対応製品の投入は予定していないとしている。

 同社がHD DVD規格のプレーヤーを投入してから2年を経過しないという早期の撤退の決断は、西田社長が「明日の経営」を見据えたうえで下したものといえる。

 同社では、HD DVD事業の終息を発表する一方、NAND型フラッシュメモリ工場を、岩手県北上市および三重県四日市市の2か所に同時に建設する計画を発表。1兆7000億円を超える投資を予定する。

 「先を見据えた投資が必要であり、その手綱を緩めるわけにはいかない。この分野では、パソコンに搭載するSSD(補助記憶装置)の需要増大も見込まれる。2010年の量産開始によって、市場全体の40%のシェアを目標とする」と、集中事業における成長政略を示した。