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富士通 SaaS事業 第二幕 基盤整備からパートナー獲得施策へ

2008/05/19 21:00

週刊BCN 2008年05月19日vol.1235掲載

 富士通(黒川博昭社長)のSaaS事業が5月、新たな局面に入る。今年2月に3つのメニューを用意したSaaSサービスと、ISVやSIerに向けたパートナー制度「SaaSパートナープログラム」を発表して事業基盤を整備。新展開として5月からはITベンダーに対しパートナー制度への参加を本格的に要請開始した。

「ソリューションディーラー」との連携を軸に

 パートナー獲得施策に注力分野を移し、同プログラムへの参加企業を年内中に200社まで引き上げる。富士通とソリューションディーラー契約を結ぶ約750社のベンダーを中心に、参加を呼びかける方針だ。2月の発表から約3か月が経過し、パートナーの受け入れ体制が整ったと判断、SaaS型アプリケーションサービスの品揃え拡充と、売り手の確保に本格的に動き出す。

 富士通はSaaS型サービス事業で、2月に3つのメニューでサービス内容を体系立てた新プランを発表し、SaaS事業の本格化を宣言していた。この時点で同事業に賛同していた企業はオービックビジネスコンサルタント(OBC)やピー・シー・エー(PCA)、サイボウズなどISVを中心に11社いた。3つのメニューとは、(1)ISVなどがSaaS型サービスを提供するために必要な実行基盤(プラットフォーム)を提供する「SaaSプラットフォームサービス」(2)実行基盤を活用してアプリケーションサービスをユーザー企業に提供する「SaaSアプリケーションサービス」(3)SaaS型サービスを提供したいITベンダーや、ユーザー企業の詳細な要件に個別対応する「SaaSビジネスアウトソーシングサービス」がそれだ。

 この3つのサービスは、富士通が自社製ソフトをSaaS化し直接ユーザー企業に販売するケースもあるが、基本戦略はISVやSIerとの協業を主眼に置く。他社製パッケージソフトをこの実行基盤で動作可能とするためにISVと協業したり、メニュー化したSaaS型サービスを間接販売するITベンダーとアライアンスを組んだりすることで事業拡大を狙っている。そのため、ISVやSIerなどが富士通と手を組みやすいように「SaaSパートナープログラム」を用意したわけだ。

 このパートナープログラムでは、参加企業を3種に分類。(1)富士通とSaaSビジネスでの協業を検討する「一般会員」(2)自社ソフトのSaaS化のために富士通の実行基盤活用を検討する企業「アプリケーションパートナー」(3)SaaS型サービスを販売する「リセールパートナー」がそれで、各分類ごとに必要な情報や研修などを提供し、パートナーのSaaSビジネスを支援する仕組みだ。

 発表から約3か月が経ち、同プログラムへの参加を要請できる体制が整ったため、5月から本格的にパートナーの募集を開始。中核となる推進組織としてパートナービジネス本部とマーケティング本部およびサービスビジネス本部から15人を選び出し、この人材で構成する「SaaSパートナーアライアンスチーム」を発足させた。

 同パートナープログラムへの参加目標は年内までに約200社。「すでに150社ほどのベンダーから引き合いがある」(渡辺いつ子・サービスビジネス本部SMEアウトソーシング推進部担当部長)状況という。ただ、富士通製品を中心にソリューションビジネスを手がける「ソリューションディーラー」契約企業約750社からの引き合いが少ないため、今後はこの750社に対し全国の支社・支店などを活用して参加の呼びかけを積極化させる方針。これまでハードやパッケージソフトの販売で結びつきが強かった富士通系ディーラーとの関係をSaaSでも強固にし、間接販売網の整備とアプリケーションの拡充を一気に加速させる狙いだ。

 富士通はかつてASPサービスと題していた自社メニューを今回を機にSaaSサービスに名称統一した。自社製ソフトのSaaS化にも力を注ぎ、現在15種類のSaaSサービスを2倍の30種類に引き上げる施策も同時に手がける。

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