クリエイティブ・コモンズ(CC)の創設者ローレンス・レッシグ氏(スタンフォード大学教授)は、日本でCCライセンスの考え方が根付く可能性が高いとの見通しを示した。動画投稿のニコニコ動画をはじめとするユーザー参加型メディア(CGM)が急速に勢力を増しており、ユーザーの創作意欲も高い。とりわけ世界市場で競争力の高い日本のアニメ・ゲームのコンテンツホルダーのなかには、著作権を巡ってCGMユーザーと正面からの争いを避ける傾向が見られる。「CCライセンスを受け入れる潜在的な需要は大きい」と、ユーザーとの“共存共栄”に役立つツールとして、日本での普及に全力を挙げる。

 レッシグ教授が、著作権の一部をユーザーに開放するCCの活動を起こしたきっかけは、Web2.0時代をけん引するCGMユーザーと既存コンテンツの権利者の対立を回避するためだ。欧米では、著作権そのものを一切認めない過激な考え方も出てきており、こうした勢力と権利者との摩擦を軽減する狙いもある。

 CCの基本的な立場は、「ユーザーと権利者の全面的な対立を避ける」(レッシグ教授)こと。そのために、CCライセンスのルールに沿って権利者の持つ権利の一部をユーザーに開放。ユーザーはこの枠内で二次創作などを楽しむというものだ。つまり、現在の「All Rights Reserved」(すべての権利を保持する)から「Some Rights Reserved」(いくつかの権利を保持する)への移行を提唱する。

 米国では、レコード会社などに所属する弁護士が、権利者に無断で二次創作を行ったユーザーを訴訟の対象にするケースが目立っている。ターゲットはCGMユーザーの中核部分を占める若者や子供だ。著作権を巡る争いは、従来は業界内、同業者間であるケースが大半だった。だが、Web2.0時代の今日では一般市民、それも子供まで巻き込んだ“紛争”に発展しつつある。「同じ資格を持つ者として、心が痛む」と、心情を吐露する弁護士もいる。

 ひるがえって国内を見ると、基本的な対立構造は米国と同じ。ただ、ユーザーを訴訟の対象にすることをためらう権利者が多く、著作権の撤廃を訴える勢力も強くない。だからといって対立が沈静化する兆しはなく、権利者の矛先は動画投稿サイトなどの運営会社へ向けられる。対する運営会社はCCライセンスの仕組みをテコにして権利者と交渉し、関係改善に努める動きが見られる。

 レッシグ教授はこうした状況を踏まえたうえで、「CCライセンスをフルに活用することでCGM運営会社と権利者の双方にメリットのあるビジネスモデルを構築する余地が生まれつつある」と、分析する。韓国でも同様の動きが見られるといい、訴訟リスクが高い米国に比べて「日本や韓国でより早くCCライセンスが根付く可能性がある」と見通しを語っている。

ネットの過小評価は危険
社会全体にメリットを


 IT業界のなかには、“CCはあくまでコンテンツ領域の話であり、ハードウェアやソフトウェアビジネスとの関係は薄い”と捉える見方もある。だが、CGMなどインターネット動向の過小評価は、企業経営のリスク要因になることもあり得る。

 デジタルコンテンツは、デバイスにデータをコピーして消費する構造だ。数年前、音楽コンテンツを巡って日本の家電メーカーはコピーを防止し、制限することばかりに気をとられた。このすきにアップルの携帯オーディオiPodが市場を席巻したのは周知の通りである。

 昨今、地デジのコピー制限に関して家電メーカーと著作権団体が議論をかまびすしくしている姿に、携帯オーディオの失敗が透けて見える。レッシグ教授は、「コピーを完全に禁止することは、デジタル時代にそぐわない。現代の禁酒法のようだ」と表現する。

 ユーザーはインターネットを通じて自分の意見や作品の発表を自由に行えるようになり、その影響力は日増しに強まる。IT業界とコンテンツホルダーがCCライセンスを活用した新しいビジネスモデルを率先してつくることが「社会全体にとって大きなプラスになる」と、CCの重要性を訴える。