移住者獲得や農業活性化を実現

 ITを使った地域振興にチャレンジしている地方都市が増えてきている。徳島県勝浦郡上勝町(笠松和市町長)もその一例だ。町民のITスキルをアップさせるために勉強会を開いたり、中心産業である農業を活性化するために情報システムを強化したり……。高齢化が進む人口2000人程度の小さな地方都市が試行錯誤しながら進めたIT施策の中身と成果をみる。

 温州みかんと木材の産地として有名な上勝町。徳島市の南西に位置し人口は約2000人で、高齢者(65歳以上)率は49%と高い。そんな小さな地方の高齢都市は昨年10月、マイクロソフトの協力を得て、ITを使った地域振興を開始した。町民の生活支援と町内産業の活性化が目的で、マイクロソフトのサポートは受けたが、あくまで町主導で試行錯誤しながらIT化を図ってきた。同町のプロジェクトがスタートしてからちょうど1年、簡素ながらも着実な成果をあげてきている。

 同町はまず、ビジネスと生活の両面でITを有効活用するために、町民のITスキル向上施策から手を打った。基礎的なITスキルを身につけさせるための勉強会を5回開催。合計200人程度が受講し、その成果として町内の住民と団体が開設したブログが新規に5件立ち上がり、合計15件になったという。主要商圏では小さすぎる効果かもしれないが、それで町民の情報流通量は増えコミュニティの活性化につながった。町内に引っ越す人も出てきた。2007年10月からの1年間で、IターンとUターンで転入した人が前年同期間に比べて2.25倍増えて18人になった。転入者が移住を決めた理由として「ブログなどインターネット上の情報が判断材料になったケースが多かった」(笠松町長)という。

 一方で、ビジネス面でもITは貢献している。中心産業の農業では、農家が出荷した農作物の各自の売り上げをインターネットで把握できる情報システムを構築し、その利用者が、07年10月以降1年間で2.1倍増加、122軒になっている。

 このほかにも、08年6月末に町内のITベンダーであるいろどり(横石知二代表取締役)がWeb会議サービス「Microsoft Office Live Meeting」を導入。役場や町内企業にも利用を許可し、導入後4か月間に合計8回サービスを利用。約72万円の出張旅費を削減した。

 笠松町長は言う。「地方と主要都市の格差は、都会に住んでいる人が思っている以上に大きい。ITはそんな格差を埋められる可能性があるツール。今後も積極的に推進する」。

 同町はこの1年の成果をもとにIT施策の3か年計画を来年度から新たにスタートさせるつもりだ。300人の受講を目標にしたパソコン教室の開催や、高齢者世帯130世帯の受講を目標にした啓発セミナーの実施、町内に点在するブログやホームページを集めたポータルサイトの開設(09年3月予定)などを手がける計画だ。