日立ソフトウェアエンジニアリング(小野功社長)は、サービス事業を拡大させる。IT投資の抑制ムードが一段と強まるなか、SaaSやクラウドコンピューティングなど従来の手組みのソフトに比べて初期費用を抑えられるサービス型商材の比率を高めることで、ユーザー企業のコスト削減ニーズに応える。同社は業界に先駆けてSaaS事業に参入。独自に開発したSaaS型商材も順調に立ち上がっており、今年度(2009年3月期)は連結売上高に占めるサービス事業の比率が15%へと拡大する見込み。SaaSやクラウドなどの不況に強い商材を積極的に投入していくことで、2011年3月期までに同25%へ高める。

 不況対応型へ大きく転換する──。日立ソフトは、SaaSやクラウド型の不況に強い商材を重点的に伸ばす。SaaS型の業務アプリケーションを月額定額で利用したり、ユーザー企業の既存の業務システムをデータセンターで一括管理する商材を拡充。SaaS型は初期導入コストを抑えられ、最新のサーバー仮想化技術を駆使したデータセンターで管理すればシステムの維持費も削減できる。コスト低減を求めるユーザー企業の要望に率先して応えることでサービス事業の拡大を目指す。

 個別にソフトを開発する大型プロジェクト案件が減少する“2009年問題”と“大型不況”のダブルパンチで、IT業界の受注環境に不透明感が強まっている。昨年度、過去最高の利益を計上した日立ソフトも、今年度に入ってから環境の悪化を実感。今年4月以降、不測の事態に備える“緊急時対応プラン”を策定し、不採算プロジェクトの抑止や不況下でも成長を持続する対策を強めてきた。その柱の一つがサービス事業の拡大である。

 SaaS型CRM(顧客情報管理システム)のセールスフォース・ドットコムとユーザー企業の基幹業務システムとのつなぎ込みや、独自に開発したSaaS型IT基盤提供サービス「SecureOnline(セキュアオンライン)」をベースとしたサービスを増強。ほかにもPC管理・監視サービス、微生物簡易同定サービス、仮想化SIサーバー統合アセスメントサービスなど上期だけで9件の新サービスを投入。従来からの取り組みの効果もあって、中間期(08年4~9月期)の売上高に占めるサービス事業の比率は、アウトソーシングなども含めて昨年同期の12.5%から14.5%まで拡大。通期では同15%を見込む。

 販売体制も強化する。サービスデリバリ事業推進本部を今年9月に設置したのに続き、11月には日立製作所が日立ソフトのSecureOnlineをベースとしたPaaS事業を始めるなど、拡販に向けた体制を急ピッチで整備。中堅・中小企業マーケットに強い日立情報システムズや開発力のある日立システムアンドサービスとの連携も強める。SaaS、クラウド時代に突入している今、「日立グループの総力を結集する」(日立ソフトの小野社長)と、サービス基盤を共有し、多種多様なサービスを展開することによって規模のメリットを打ち出す。

商流のポイント 日立ソフトは情報漏えい防止の「秘文」や文書管理の「活文」などのパッケージ製品で幅広い販路を開拓した実績がある。商材開発の投資も今期は前期より約10億円多い69億円に積み増しを計画するなど投資を拡大。上期だけで8件の新規パッケージ製品を発表しており、サービス型の新製品と合わせると計17件に達する。サービスとパッケージを収益の二本柱に位置づけ、営業力の強化や販売チャネルの開拓を進める。

 日立ソフトは中期経営計画で2010年度(11年3月期)に連結売上高2000億円を計画しており、サービス事業の構成比は今期見通しより10ポイント上乗せして25%に高める。今期見通しの実数が約263億円なのに対して、2倍近いおよそ500億円まで高める計算になる。IT投資の減退でトップラインを計画どおり達成できるかは不透明さが増すものの、サービスやパッケージ製品などを軸とする不況に強い事業構造への転換を急ぐことで収益力を高める。2015年度までの長期目標では、「サービス事業の構成比を35%に高めたい」と、SaaSやクラウド、アウトソーシングなどのサービスへのシフトを加速させることで不況を乗り切る。