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iSCSIに商機到来か!? 仮想化でSMBがSANを求める

2009/10/29 21:41

週刊BCN 2009年10月26日vol.1306掲載

 ストレージの接続方式で「IP-SAN」の構築が可能なiSCSIに、ビジネスチャンスが到来しそうな機運が高まっている。とくにSMB(中堅・中小企業)市場で需要が出てくる可能性が高い。サーバー仮想化の波が押し寄せているなか、ストレージとしてSANを構築するニーズがあるためだ。これまで帯域の問題など技術的な面で課題があったiSCSIだが、メーカーによる機能強化や新製品の投入で、ユーザー企業がIP-SANのメリットを意識し始めている。

 SMBのユーザーを中心にITに関する動向や投資状況などを調査しているノークリサーチは、「ユーザー企業の仮想化に対する取り組み姿勢の変化で、IP-SANが普及する可能性を秘めている」(岩上由高・シニアアナリスト)という。同社はこのほど「サーバー投資状況」調査を実施。その結果、目立ったのは「年商が50億円以上100億円未満と100億円以上300億円未満の企業で、サーバー仮想化を前向きに検討している」ことだった。こうした意識をストレージと関連づけると、「仮想化環境を構築するとき、ファイルアクセスのNASでなく、ブロックアクセスのIP-SANを求める声が増え始める」としている。

 また、300億円以上500億円未満のユーザー企業のストレージに対する意識は、「10GbEスイッチが身近になりつつあり、FC-SANと比較しても遜色ない転送速度が実現できるようになったことで状況が変わってきた」と、これまではFC-SANが主流だった領域でもIP-SANを求める声が出てくる可能性を示唆した。

 ノークリサーチでは、ユーザー企業のストレージに対する意識が変わりつつあるのは、普及のトリガーとなる製品が登場したためともみている。その一つが日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が市場投入した「HP LeftHand」シリーズという。「低価格と拡張性を両立させた製品は、SMBの購入を促すことにつながる」とみる。日本HPでは、小規模ブレードサーバー環境を構築したユーザー企業を対象に「P4000 Virtual SAN Appliance for VMware ESX」を「LeftHand」シリーズで発売している。「この製品は、DAS接続環境からのステップバイステップの移行をサポートする製品になるのではないか」と分析する。

 一方、NASは「ファイルデータが増大していくため、普及率は今後も上昇するだろう」とするものの、「NASの機能はOSやミドルウェアが代替するようになり、NASストレージ機器はサーバーと同様にコモディティ化する傾向にある」と指摘する。ネットアップなどのように大企業を対象にミッションクリティカルな用途を想定した専用OSを提供する製品群を除いては、「製品の価格が下落していくだろう」と予想する。

 ストレージ市場の変化については、「ユーザー企業がサーバー仮想化に取り組むのは、新規サーバー導入時。サーバー自体の回復が大前提になる」という。ただし、景気の回復に伴ってIP-SANが台頭する可能性は十分にあるということだ。

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