伊藤忠テクノソリューションズ(CTC、奥田陽一社長)は、サービス事業への投資を加速させる。CTC自らが所有するハード・ソフト資産の比率を高め、顧客企業の初期投資を抑制。顧客の財務的な負担を軽減することで受注拡大につなげる。必要に応じて顧客のハード・ソフト資産を買い取り、このIT資産で稼働中の業務システムを“サービス”として提供する「アセット(資産)組み替えサービス」もスタートさせた。

宮脇茂雄チーム長
 厳しい受注環境が続くなか、SIerは顧客企業のIT投資を引き出そうと躍起になっている。月額料金で利用できるクラウド方式のサービス事業の拡大もこの一環であり、顧客企業からみれば、ハード・ソフトへの初期投資を抑え、費用を平準化できるメリットがある。CTCは、さらに一歩踏み出し、今年1月から顧客先ですでに稼働しているハード・資産を買い取り、ITによるサービスのみを月額で提供するサービスを開始した。SIerの先行投資はかさむことになるが、「サービスは投資ビジネスの一種」(CTCの宮脇茂雄・サービスビジネス推進チーム長)と捉え、顧客の需要喚起を狙う。

 資産の買い取りでは、野村総合研究所(NRI)が野村證券のソフトウェア資産を約400億円で買い取り、およそ5年間で償却する取り組みを始めているケースが先例としてある。NRIにとっては先行投資になるが、ユーザーの財務的な負担は大幅に軽減できる。償却期間中、ユーザーが同システムを使い続ければ、投資を回収できる。また、SIer自身の努力によって同システムの運用コストを引き下げれば、その分、利益が増える。CTCでは、リスク軽減のため、まずはフロントオフィス系資産の自社所有から始め、顧客の需要動向を見ながら段階的に基幹系システムでも自社所有、買い取りの比率を増やす計画を立てている。

 例えば、デスクトップのサービス化(DaaS)では、顧客のパソコンや関連するネットワーク機器をCTCが所有し、顧客はデスクトップサービスのみを利用することを想定。これまでは、顧客はパソコンやネットワーク機器、OS、アプリケーションなど一式を購入する必要があったが、このサービスを使えば自身の所有資産の圧縮が可能になるとともに、社員の増減や構造改革に伴う組織の改編にも柔軟に対応しやすくなる。

 CTCは、顧客の理解を得たうえで、自社で所有・運用するサーバーやネットワーク機材を別のユーザー企業と共有したり、最新のシステム運用技術を随時取り込んで利益率を高めるといった“改善の余地”が大幅に広がる。CTC自ら資産を所有してこそ成り立つモデルである。顧客企業の関心は高く、「早ければ今年度(2010年3月期)から来年度第1四半期(10年4~6月期)にも受注第1号が決まりそうだ」(CTCの宮脇チーム長)と、手応えを感じている。同社は、アセット組み替えサービスで、向こう3年で累計30億円の売り上げを目指す。(安藤章司)