DaaS、すなわちデスクトップのサービス化が本格化しようとしている。丸紅やソフトバンクテレコムがサービス化に乗り出しており、アプリケーションのサービス化(SaaS)に続き、パソコン端末の中身(=デスクトップ)までサービス化に向かう様相だ。デスクトップをサーバー側に集約するシンクライアント化は一般的に行われてきたが、DaaSの登場によってデスクトップそのものを特定のITベンダーが“サービスとして提供する”流れが加速するとみられる。
パソコンなどのクライアント端末は数が多く、分散しているために維持費がかさむ。この問題を解消しようと、サーバー側で集中的に管理するシンクライアント化やデスクトップの仮想化によって維持費を低減する動きが活発化している。こうした動きをさらに一歩進めたのが、“デスクトップのサービス化(DaaS)”である。丸紅が今年7月から始めた「VirtuaTop(バーチャトップ)」は、丸紅のデータセンター(DC)をベースに提供するマルチテナント型のサービスだ。複数(マルチ)のユーザー(テナント)に向けたサービス提供が可能で、その分、価格を抑えることができる。最小構成で1デスクトップあたり月額6500円からで、大がかりなシステム構築が必要な既存のシンクライアントよりも利用しやすい。

ユーザーの企業規模が大きい場合は、数千台単位でパソコン端末がある。規模の大きいシンクライアントシステムを構築しようとすると、初期投資がかさむ。その点、DaaS方式なら、必要とする台数分の仮想デスクトップを随時調達すればよいため、「初期投資を大幅に抑えられる」(丸紅の大橋一登・ITソリューションビジネス部ソリューションビジネス開発チーム長)というメリットがある。VirtuaTopは、米デスクトーンが開発。国内では他にソフトバンクテレコムなどがサービスの提供を表明している。
ポイントは、デスクトップの中身をすべて丸紅などサービス提供者のDCに集約するという点。顧客はサービスのみ利用する。業務アプリケーションの部分は、顧客の電算室やアウトソーシング先のDCから取り込むことが可能で、「ユーザーは従来のパソコンと同じ感覚で利用できる」(同)という。ネットを使ったサービスなので、モバイルやユーザー企業の社員が在宅勤務するケースでも使える。丸紅では、SIerなどの代理店を経由して同サービスを販売し、向こう1年間で1万ユーザーの獲得を目指す。ビジネスパートナーには、月額料金のマージンを提供するほか、DaaSの利用に必要なネットワーク周りの基盤整備、アプリケーションとのつなぎ込みなどの周辺SIで利益をあげてもらう。デスクトーンでは、2010年中にも複数のDCを仮想的に統合運用する機能を追加する予定。より大規模なサービスにも対応が可能になり、丸紅ではDCサービスビジネスの今後の収益の柱の一つに位置づける。調査会社のIDCでは、2012年に企業で使われるパソコンの1割以上がシンクライアント化されるとみており、DaaSの登場によってこの動きがいっそう強まりそうだ。(安藤章司)