調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)によると、2009年度の国内CRM市場の出荷金額は、前年度比2.5%増の191億1000万円となった。パッケージ市場が前年比7.9%減の93億9000万円となった一方で、SaaSは15%増の97億2000万円。SaaSが初めてパッケージを上回る結果となった。ITRでは、この傾向は10年度も続くとみている。

 成長著しいSaaS型CRM市場で、富士通が提案しているのが、SaaS型CRM「CRMate」だ。富士通中部システムズと富士通東北システムズが共同開発し、2007年にリリースしたこの製品は、富士通グループとパートナーを介して拡販している。富士通中部システムズの冨浦雅裕ソリューション事業本部長に、製品の特徴などを聞いた。

 冨浦本部長は、「セールスフォース・ドットコムに対抗して商品化したのが『CRMate』だ。当社は、富士通グループのブランドや国内ベンダーとしての強みなどを前面に打ち出して差異化を図っている」と胸を張る。

 企業から寄せられるニーズでとくに多いのが、Excelのデータベース化だという。「CRMate」のセルフカスタマイズ機能を利用すれば、項目名の変更や項目の表示/非表示をユーザー自身で設定できる。マウスを利用してドラッグ&ドロップで簡単に操作したり、項目ごとに入力制限したりできることも売りだ。

 ユーザー企業の利用する帳票は「CRMate」でデータベース化し、リアルタイムに情報を共有。必要な情報をすぐに検索できる。登録データは集計加工できる。

 現在のユーザーアカウント数は約15万。活用事例として多いのは、クレーム・問い合わせ管理と商談管理・活動報告の二つだという。一方で、「思いのほか売れているのが自治体・官公庁だ。2週間程度でカスタマイズして、早くサービスを立ち上げられるところが受け入れられているのだと思う」。企業の総務部門でも、緊急時の情報収集と管理に「CRMate」を活用する事例が増えている。このほか、選挙事務所の支援者名簿管理や後援会活動の管理などで利用が進んでいるという。

 今年3月には、「CRMate」を利用して宮崎県向けの「鳥インフルエンザ防疫対策支援システム」を構築した。宮崎県内で100羽以上の養鶏を所有する全農家の情報をデータベース化し、各農場で死亡した鶏の情報などを集約。養鶏関係者などが農場ごとの死亡鶏状況を県に直接報告し、県は集まった情報をもとに、家畜保健衛生所などで異常鶏の早期発見などが可能になった。2010年には、「CRMate」を活用した「口蹄疫復興支援システム」を宮崎県に納入した実績もある。

 サービスの提供には、富士通が国内に設置しているデータセンター(DC)を利用している。「海外のDCにデータを置きたくないというユーザーの声に応えられるのは国内ベンダーならでは」という。

 SaaS型とプライベートクラウド型を用意しており、「大企業で顧客帳票をDCに預けられない場合はプライベートでの利用になる」。

 価格は、利用用途や目的などに合わせて「CRMate/お客様接点力」と「CRMate/ライト」の二つのサービスがある。「CRMate/お客様接点力」は月額5500円/1ユーザー(60ライセンス以上にロット割引)からで、「CRMate/ライト」は年額24万円/30ユーザーから。

 「CRMate/お客様接点力」は、契約期間1ヶ月、1ユーザーライセンスが最小契約単位で、「CRMate/ライト」は契約期間1年、30ユーザライセンスが最小契約単位となっている。

 オプションで、1GB単位でのディスク使用量の追加や1GBの新たなテナントの追加、1同時接続ライセンスの追加が可能。

 冨浦本部長は、「情報システムの利用で一番遅れているのが営業支援だ」と指摘する。「できる営業が販売ノウハウを秘密にして、共有しようと思っていない。経営幹部は情報を共有したいと思っているが、現場とのギャップが存在する。『CRMate』を利用することで、いやでも情報を共有させるなど、困難ではあるが、トップダウンで推し進める必要がある」とアドバイスしている。(信澤健太)

富士通中部システムズの冨浦雅裕・ソリューション事業本部長