日本マイクロソフト(樋口泰行社長)は、6月25日、ITベンチャーが集う「microsoft MIC関連IT企業交流会」を開催した。同社のイノベーションセンター(通称MIC)が主催した「ITベンチャー支援プログラム」や「イノベーションアワード」などに参加したITベンチャー企業が中心となって、情報収集やビジネス展開を目的に交流。全国のITベンチャー企業関係者ら約50人が参加した。

 交流会では、まず元マイクロソフト・テクニカルエバンジェリストで、ブロッサム音楽事務所の代表指揮者を務める西谷亮氏が「マイクロソフトのクラウド戦略とビジネスとしての展望 Office365からモバイルまで」と題して基調講演を行った。

ブロッサム音楽事務所の代表指揮者を務める西谷亮氏

 西谷氏によれば、「2002年頃にオンラインサービスの提供を目的とした『.NETマイサービス』を展開しようとしていた。クラウド・サービスの先駆けだった」と説明。サービス自体は、その後立ち消えになったが、当時からクラウドへのレールは敷かれていたという。いま日本マイクロソフトでは、「『Windows Azure』や『Dynamics CRM』などがオンラインサービス化されている」と、マイクロソフトがクラウド・サービスを開始するに至った経緯を説明した。

 最近、マイクロソフトは、世界で「We're all in.」をキーワードとしている。これは「『雲の中(クラウド・サービス)に必要なものがすべてある』という意味とも読み取れる」と、このキーワードの意図するところを推察。だが、「マイクロソフトからはサービスを強化するというメッセージが出ているが、すべてをクラウドが賄うのではないということを理解すべきだ。マイクロソフトのSaaSは、『Software as a Service』ではなく、オンプレミス(企業内)に必要なサービスを連携させて提供しようとしているので、『Software Plus Service』や『Platform as a Service(PaaS)』といえる」と定義した。

 次に、マイクロソフトのクラウド・サービスなどを活用して、何ができるかを解説。「全部が全部、クラウド・サービス化するのではなく、オンプレミスとの組み合わせなどで、カスタマイズ要件に応じた適切な提案をする必要がある。Azureなど、拡張性のあるクラウド・サービスに、独自のサービスを付加していくことが重要な選択肢になる。いまあるプラットフォームの延長上にクラウドがある」と語った。

 また、秋口にリリースが予想される「Windows Phone 7」に言及。「かつての『Windows CE』などは使いにくかった」と指摘したうえで、「デバイスではなく、『Platform』と呼ぶほうが適切だ。『Silverlight』で開発できるので、そのなかにアプリケーションが展開できる。『Windows』関連の知識を生かして、モバイル関係のソリューションを提供できる」と、クラウド・サービスと組み合わせた新しいサービス展開を視野に入れるべきと述べた。

 続けて、ITベンチャー企業の代表者が支援事例を紹介した。最初は、ワンビの加藤貴社長が、「モバイル端末セキュリティ遠隔データ消去『トラストデリート』」と題して情報を提供した。加藤社長は、トラストデリートが家電量販店販売からASPサービス、OEM販売を展開したあと、2008年に自社構築用の企業向けサーバー製品をリリースし、09年から日本マイクロソフトの「bizSpark」「Innovation Award」「ITベンチャー支援プログラム」「Imagine Cupメンター協力」などとの連携が始まった経緯を説明した。

ワンビの加藤貴社長

 加藤社長は「マイクロソフトのITベンチャー支援で得られたのは、まずは日本マイクロソフトのホームページに掲載されることで、会社の知名度が上がったこと。また、日本マイクロソフトは各種のテクノロジーセミナーを開いているが、それをいち早く教えていただき、当社のエンジニアが参加している。日本や世界にまだ出ていない技術があって、それをマイクロソフトのエバンジェリストにダイレクトに聞くことができた」と、Innovation Awardを受賞したことで、OEM販売などが拡大した語った。現在、同社の製品は、遠隔データ消去サービスとしてKDDIやBIGLOBEなど提供が拡大している。また最近は、スマートフォン利用者が増大に備え、関連製品を強化しているとして、「iPhone/iPadに続き、Windows Phoneが出てきたとき、遠隔データ消去に関連した対応製品を出していく」と述べた。

 支援事例の2社目は、名古屋に本社を置くステップワイズ。長谷川誠社長が「クラウド型販売管理システム『Venta for Silverlight』」と題して説明した。冒頭、マイクロソフトのIT支援ベンチャープログラムに参加して、どうビジネスが進展したかを語った。「日本マイクロソフトの支援を受ける前、当社は、よくある零細ソフトハウスで、日銭を稼ぐのに駆けずりまわるベンダーだった。そのときに支援プログラムに応募し、成長をしていった」。マイクロソフトとの関連で、メディア露出やイベントブースでのコマーシャルを積極的に出すなかで、マーケティング・スキルを上げることができたという。

ステップワイズの長谷川誠社長

 ステップワイズは、マイクロソフトの「Azure」や「Silverlight」など、最新テクノロジーにすでに着手し、「年内にリリース予定の『Windows Phone』が出ると同時に当社製品も出すことができる」と予告した。

 同社は、クラウド型販売管理システム「Venta for Silverlight」を提供している。「ブラウザさえあれば、簡単な設定ですぐに導入できる。帳票系などのカスタマイズに関しては、『Silverlight』を使って『Excel』で吐き出すかたちで対応している」と、クラウド・サービスを利用することで、スピーディに構築し、インターフェースに「Silverlight」を使うことでクライアント/サーバー型のアプリケーションと変わらない利用環境を実現しているとした。

 「microsoft MIC関連IT企業交流会」は、このあと会場を移して開いた懇親会で、参加者同士が懇親を深めた。