日本情報技術取引所(JIET、二上秀昭理事長)は、6月28日、東日本大震災で被災した地域の復興を願って、宮城県仙台市の日本マイクロソフト東北支社で「JIET東北支部仙台営業商談会」(後援:日本マイクロソフト/BCN)を開催した。当日は、JIET関係者や地場ITベンダーなど約70人が参加。JIET本部が首都圏など全国の会員ベンダーから集めたソフトウェア開発案件を地場ベンダーに紹介したほか、懇親会などで交流を深めた。

日本マイクロソフトの東北支部のセミナー室は地場ITベンダーなどで満杯。立ち見も出た

 冒頭、JIETの二上理事長が「先の震災に哀悼の意を表したい。JIET神奈川支部の提案で本日の商談会の開催が決まった。全国の案件を知ってもらいたいと思う」と述べたあと、JIETの説明をした。また、東北地域の会員に関しては、半年の会費無料と入会金免除を決めたことを明らかにした。 

日本情報技術取引所の二上秀昭理事長

 地元行政からは、仙台市の今井建彦情報政策部情報政策課長が「3月11日の震災で非常に大きな被害を受けた。津波の被害はとくに大きく、これまで築き上げた文化や伝統も流された。これに対して全国から支援をいただき、少しずつ復興の道筋が敷かれている。ただ、住まいは立て直されつつあるが、失業率に関しては課題が多い。案件をもたらしていただけることに、心から感謝している」と挨拶した。 

仙台市の今井建彦情報政策部情報政策課長

 続いて、地元ITベンダーが加盟するIT団体の宮城県情報サービス産業協会(MISA)の穴沢芳郎常務理事が「本震災はこれまで経験したことのない大規模なもので、経済・社会に大きな影響を与えた。東北では、長い間に築いた産業が壊された。幸い、MISA会員は仙台市に事務所が集中しており、震災後1~2週間で事業を復活することができた」と述べたあと、穴沢氏自信も、自宅の屋根修理時に震災にあい、全治3週間の重傷を負った生々しい状況を明らかにした。さらに、「いま、大変厳しい状況にあるなかで、今回JIETの商談会が開催されることに感謝する。IT関連で、全国から手を差しのべていただくのは初めてのことだ。これを機に、新しい東北が再建されることを願っている」と延べた。 

宮城県情報サービス産業協会の穴沢芳郎常務理事

 講演会では、仙台市に本社を置くトライポッドワークスの佐々木賢一社長が「被災地の実情報告と支援活動『ITで日本を元気に!』」と題し、社長自身が経験した震災直後の状況や復旧・復興に向けた地元の取り組み、また自社製品を紹介した。「震災直後の極限状態にも関わらず、BCP(事業継続計画)を即席で実行できた」と、震災後にどんな行動をしたかを紹介した。 

トライポッドワークスの佐々木賢一社長

 佐々木社長は、「IT業界は、実はあまり被害がなかった。事務所はファシリティがかなり壊れたが、実害は10万円程度。地場IT業界の復旧は早かった。仙台市の中心部では、携帯電話やPHS、Wi-Fiが不通。インターネットだけが生きていて、3Gパケット通信を使うことができた。とくに、安否確認で大きく差が出た。直後、最も役立ったのがワンセグテレビ。被害の状況をニュースで確認できた。また、TwitterやFacebook、Skypeは役だった」と、震災直後の状況を解説し、つながるインフラで安否確認を行ったことを紹介し、ふだんからシミュレーションしておくことの重要性を指摘した。

 震災直後の1週間、東北地域は陸の孤島と化していたという。「当社の物流は新潟経由で、何とか全在庫を東京に届けることができた。結果として、1日も納期を遅らせることなく、全国の顧客に納品できた。とにかく、ビジネス・サバイバルだった。BCPやディザスタ・リカバリ(DR)の本番を体験した。思い返すと、情報収集の重要性を認識した。その情報で課題を明確にし、現状を把握し、早く決断して早く動くことが重要だった」と語った。

 佐々木社長は、震災直後から自社の業務以外で、仙台市内の情報発信をしようと考えていたという。中心部の被害が小さいことを全国に知らせるため、Facebook上にファンページを開設し、直後は1か月で18万アクセスがあった。さらに、トライポッドワークスでは、現在、在宅勤務用のソリューションを提供しはじめていることを明かした。佐々木社長によれば、東北地方のITベンダーは、同業他社から仕事をもらっているケースが多く、その比率は売上高の39%に達するという。下請けが東北ITベンダーの生業になっているのだ。そのため、「震災で、じり貧になるケースが多くなっている。ただ、(東北地域のITベンダーが)外へ出て商売する意識が高まっていることも事実だ。多くを失った東北は、巨大な実験場になる」と、いまが潮の変わり目であると強調した。

 続いて、船井総合研究所の斉藤芳宜・チームリーダーチーフコンサルタントが「震災後の業界動向とソフト会社が進むべき道」と題して講演した。今回の大震災が、原発安全神話の崩壊や計画停電、首都機能のマヒという課題を突きつけたことを踏まえ、「これはどんなメッセージだったのか。便利な生活を追求し続け、必要以上の電力や過密ダイヤが生まれたということだ。半永久的に節約する必要がある」としながら、節電などを一過性のものではないものとする提案を行った。

船井総合研究所の斉藤芳宜チームリーダーチーフコンサルタント

 斉藤チーフコンサルタントは、震災後の変化として、(1)省エネ的なモノの考え方の変化「より節約志向へ」(2)贅沢の考え方の変化「贅沢から贅選(贅沢を選択する)」(3)安心感への考え方の変化「安心・安全のためにお金を払う」(4)仲間意識の変化「仲間と地縁を大事にする」――の四つを挙げた。これらを踏まえて「ビジネスチャンスが生まれる」と指摘。次に、これからの景気について触れ、自粛ムードによる経済活動の停滞や資材関係などの物価高(インフレ)、復興資金に20兆円が必要といわれるなかでの国の借金の増加、経済縮小の可能性などがあると語った。「単純に原価が上がり、税率も変わってくるだろう」と、通常通りの事業スタイルでは2~3割は売上高が落ちていくと警告した。

 斉藤チーフコンサルタントは、今後伸びるであろうITサービスについて、クラウド型サービスやスマートフォン関連ソリューション、バックアップ系商材、災害対策ソリューション(DR、BCPなど)、停電対応・節電対応機器(UPSなど)、即効性のあるコスト削減ソリューションなどを挙げた。さらに、厳しい時代を勝ち抜く原理原則――(1)時流適応「顧客ニーズ」(2)長所伸展「強みを伸ばす」(3)力相応一番化「実力にふさわしい領域で上を目指す」――を伝えた。「時流に乗れば自然に売り上げは上がる。ただ、時流は波なので、いいときもあれば悪いときもある。調子がいいうちに、どこかの領域で一番になる必要がある」と述べた。

 講演会に続いては、商談会を開催。複数ある提供案件のなかから、群馬県のITベンダー3社が発表した。案件としては、証券系システムの基盤設計・構築やポータルサイト構築、WEB-EDI、在庫管理システムとIT統合システム、中国・無錫での自動車・携帯電話・家電・複写機などの組込系開発のほか、ユーザー常駐案件などが、複数持ち込まれていた。(谷畑良胤)