ASEANの自動車産業に「異変」

 インドネシアは「アジアで最も重要な市場になった」。2014年9月に開催された「インドネシア国際モーターショー」で、トヨタ自動車の幹部がそう語った。14年、22回目の開催を迎えたインドネシア国際モーターショーは、自動車産業のなかで、存在感を高めつつある。多くのメーカーが出展して最新技術を披露する同展の人気ぶりが、自動車産業にとってのインドネシア市場の重要性を示す指標になっている。

 これまで自動車工場がひしめき、クルマを販売する市場としてASEANでトップの位置を占めたのはタイだ。しかし、インドネシアの勃興につれて、タイの陥落が始まっている。米フロスト&サリバンによると、新車の販売台数に関して、タイはインドネシアに抜かれる見込みだ。三菱自動車は、大型投資を実行して、インドネシアで大規模な製造拠点をつくる計画を打ち出している。こうした動きは、現地で自動車メーカーに情報システムを提供する日本のITベンダーにとって、ASEAN事業のエリア戦略の見直しを迫ることになりそうだ。

 日本の自動車メーカーのアジアビジネスをみると、もともとは中国に進出し、その後、製造拠点や市場の重点を徐々にASEANに広げてきた。現在は、ASEANのなかでの拠点シフトに取り組んでおり、ITインフラに関して柔軟性を求めるようになっている。IIJの丸山孝一・執行役員グローバル事業本部長は、「ASEANのハブであるシンガポールが日本企業のIT拠点として、再認識されてきている」と捉えている。

 例えば、ジャカルタからシンガポールにあるクラウドに接続しようとした場合、情報の通信速度を表す遅延時間は15ミリセカンド(msec)。東京・福岡間の遅延時間である30msecの半分で、データへのアクセスが速い(IIJ測定)。シンガポールなら、バンコクやクアラルンプールからも遅延時間は30msec以内だという。こう考えれば、企業はシンガポールにIT拠点を置けば、ASEAN主要国から迅速にシステムを利用することが可能になって、製造・販売拠点をシフトしやすい。ASEANの自動車産業に「異変」というチャンスが訪れている。ITベンダーは、チャンスを生かして案件獲得につなげたい。(ゼンフ ミシャ)