ITでASEANの「社会」を支援

 2月3日、バンコクにある「タイ王国チュラロンコン大学附属模範中高等学校」で、富士通のタブレット端末を活用した教育が始まった。生徒たちがタブレット端末に意見を入力したり、問題に答えたりして、その内容が即座に電子黒板に表示され、クラス全体で共有するという仕組みだ。富士通はタブレット端末に加え、システムのインフラも構築。ハードウェアの販売とSI(システム構築)をうまい具合に組み合わせ、メーカーとしての総合力を生かして、この案件の獲得にこぎ着けた。

 日本のメーカーやシステムインテグレータ(SIer)は、単なる「IT提供会社」ではない。文教や医療、農業など、社会の基盤を成す分野でのノウハウを蓄積し、ITに付加価値をつけた社会ソリューションを届けるプロ集団だ。こんな力を生かせば、経済成長とともに、より充実した学校教育や質の高い診療などに対する需要が旺盛になりつつあるASEANでも、商機をつかむことができそうだ。国産ベンダーにとって、日本は、ASEAN向け商材を開発するための巨大な実験室である。

 沖縄県の浦添市。観光地として国内外で人気を集める沖縄では、中国や韓国からのビジターが増え、多言語対応の救急医療に関してのニーズが急速に高まっている。浦添総合病院は、言葉の壁を越えて、来院した外国人患者と病院関係者とのやり取りを円滑にするために、NECのクラウド型ビデオ通訳サービスを導入した。タブレット端末を通じてNECの通訳センターとビデオ通話でつながり、患者との会話を通訳するもの。NECによると、このサービスの病院での活用は、「先進的な例」だそうだ。

 ASEANでは、域内の貿易の自由化を図る「ASEAN経済共同体(AEC)」が今年末に発足し、国境を越えたビジネスの機会が増えることになる。多様性に富むASEANだから、その際に問題になるのは「言語」だ。タブレット端末やクラウドを活用して、浦添総合病院のように、リアルタイムで通訳を行うソリューションは、ASEANで有望な商材になる可能性が高い。日本ベンダーならではの総合力をフル活用しながら、ITでASEANの「社会」を支えるビジネス展開に積極的に取り組みたい。(ゼンフ ミシャ)