ASEAN各国のデータセンター(DC)市場が活況を呈している。DC先進国のシンガポールに加え、マレーシアやタイ、インドネシアなど、“DC二番手”の国でも市場が形成され、速いスピードで伸びている。各国のDC市場はどのくらいの規模なのか、どんな特徴をもっているのか。ASEANの調査活動に注力している野村総合研究所(NRI)のデータを踏まえ、「ASEANのDC」を読み解く。(ゼンフ ミシャ)

 DCは、大量のデータが蓄積され、クラウド/ビッグデータ時代を担うキーインフラになる。経済成長とともに、IT市場が急拡大しているASEANでは、「(DCは)一番注目すべき分野」と、NRIのICT・メディア産業コンサルティング部の桑津浩太郎・主席コンサルタントは捉えている。

 ASEANのDC市場で、面積や売上規模に関して断トツのポジションを占めているのは、シンガポールだ。同国は、日系を含め、数多くのグローバル企業がアジア本社を置くこともあって、DCサービスは「日本を超えるレベル」(桑津主席コンサルタント)にまで発展しているそうだ。シンガポールのDC市場の売上規模(2013年)は、14億2000万米ドルと、2位のマレーシア(4億2000万米ドル)に比べて10億米ドルも大きい。政治情勢が安定しているなどカントリーリスクが低いことや、データハブを目指すシンガポール政府の手厚い支援策が、DC市場の成長を後押ししている。最近は、海底ケーブルの上陸する場所が集中するシンガポール島東部に新しいDCの開設が相次ぎ、DCの面積(オフィス内サーバールームなどを含む)は13年の48万m2から、14年には52万m2に増えた。

 シンガポールは今後も、ASEANのなかで主要なDC市場であり続けることは間違いないが、速いスピードで市場が伸びている“DC二番手”の国の動きには要注目だ。NRIの桑津主席コンサルタントは、現在のDC建設ブームなどを踏まえ、「マレーシアやタイなどのDC市場は2020年までにシンガポールに追いついてくる」と見込む。タイは、政治情勢が不安定だが、桑津主席コンサルタントが「(定期的に起こる)軍事クーデターでDCが止まったことはない」と語るように、DCの稼働には影響が及ばないようだ。

NRI
桑津浩太郎
主席コンサルタント
 さらに、ラオスやカンボジア、ミャンマーなど、経済発展が遅れ、GDP(国内総生産)が低い国でも、今後、DC市場が立ち上がる兆しがみえてきている。ミャンマーでは、「今年、初の商用DCが完成する」(桑津主席コンサルタント)予定で、それを引き金に、同国のDC市場は2020年までに、現在のマレーシアやタイの水準に伸びることが予測されている。

 こうした動きを背景に、ASEANは、クラウドやDCサービスを手がける日本のITベンダーにとって、ますます魅力的な市場になるだろう。ブルネイを除くASEAN諸国のDC面積(純粋なDC部)は、13年の48万m2から、16年にはその倍近くの91万m2に拡大する見込みだ。日本のDC面積も、同時期で36万m2の増加をみせ、順調に拡大する(16年の予測は256万m2)が、勢いをみれば、ASEANのほうが活発に伸びるわけだ。日本のITベンダーは、国内で培ったノウハウを生かしてASEANを攻めれば、商機をつかみやすくなるだろう。



エネルギー管理に商機

 ASEANでとくに需要が旺盛になりつつあるのは、DC施設のエネルギー管理だ。ASEANでは、国や地域によって電力供給が不安定だったり、大型工場が集中するシンガポール島西部のように、DC用の電力を確保しにくいエリアもある。日本のITベンダーは、東日本大震災後の電力不足を受け、外気をサーバー室の冷却に活用して空調の電力消費を少なくするなど、DCのエネルギー管理の面でノウハウを磨いてきた。今後は、ASEANでも、DCサービスだけでなく、DCそのものを賢くつくるノウハウも提案すれば、案件の幅が広がり、利益の向上につながるといえそうだ。