中国のクラウドベンダーが、海外展開を加速させている。アリババグループ(馬雲会長)と騰訊(テンセント、馬化騰・董事局首席兼CEO)は、海外でのユーザー支援プログラムを相次いで発表。増加する中国企業の海外進出を商機と捉え、ユーザーの囲い込みを図る。(真鍋 武)


 テンセントは3月29日、クラウドサービス「騰訊雲」事業の2016年の海外戦略を発表し、ユーザー支援プログラムを重点的に推し進めることを強調した。中国のApp Storeの上位ランキング企業や、大規模なモバイルアプリユーザーを有するゲーム、動画配信、インターネット金融などの中国企業が海外進出する際の支援策として、30万元相当の「騰訊雲」サービス利用の無償提供や技術者育成などを行う。同社は昨年9月、今後5年間でクラウド事業に100億元を投資する計画を発表しており、北米・香港・シンガポールでのデータセンター(DC)建設やグローバルでのパートナー網構築を進めている。15年度(15年12月期)決算報告書によると、クラウド事業の売上高は前年比100%増以上のペースで成長している。

 4月11日には、「阿里雲(AliCloud」を提供するアリババグループの阿里雲計算が、海外初のベンチャー企業支援プロジェクト「Create@Alibaba Cloud」を発表した。AliCloudのコンピューティングリソース提供や技術者育成、創業サポートなどの支援を提供するもので、ユーザー企業は最高で総額21万6000米ドル相当の支援を受けられるという。アリババグループも、昨年7月にクラウド事業に10億米ドルを投資する計画を発表しており、北米・シンガポールに次いで、中東や日本、欧州でのDC開設を計画中だ。同社の15年度(16年3月期)第3四半期業績では、AliCloudを含むクラウド・インターネットインフラ関連の売上高が前年同期比約125%増と急成長している。

 このほか、3月28日には、クラウドサービス「天翼雲」を提供するチャイナテレコム傘下の中国電信雲計算が海外戦略を発表。厦門や香港、海外でのノード拡張を進め、中国政府が推進する新経済圏構想「一帯一路」の21世紀海上シルクロードの沿線上地域で、中国企業のITインフラ構築を支援する方針を掲げた。

 中国のクラウドベンダーが海外事業を強化する背景にあるのは、中国企業の海外進出の増加だ。中国商務部によると、15年の中国の対外直接投資額(金融を除く)は、前年比14.7%増の1180億米ドルと過去最高を更新した。今年2月には、中国大手化学メーカーの中国化工集団が、スイスの大手農薬メーカーであるシンジェンタを中国企業では過去最大となる約430億米ドルで買収すると発表するなど、海外でのM&A案件も増えている。中国のクラウドベンダーにとっては、海外の地場企業よりも、すでに国内で関係のある中国系企業のほうが顧客を得やすい。そこで、支援プログラムを充実させ、囲い込みを図ろうとしている。