カシオ計算機(樫尾和宏社長)は、同社独自の光学エンジン「レーザー&LEDハイブリッド光源」を搭載したプロジェクターの新製品を発売した。4月までに価格競争力のある8機種を一挙に発売し、ビジネス向けプロジェクター市場の多くを占める「水銀ランプ方式」からの置き換えをねらう。待たずに投映でき、低消費電力で設置場所の自由度が高い同社プロジェクターの特徴を売りに、一般オフィスの会議室だけでなく、小売店舗やアミューズメントなどの用途にさらに拡大する。(谷畑良胤)

電源オンから最短5秒で 最大輝度へ

 同社は2010年、プロジェクター全機種を半導体光源化し、山形カシオで国内生産している。エントリーモデルの第一弾として、「XJ-V1(光学1.1倍ズーム搭載)」を15年に発売した。水銀ランプ方式が大半を占めるプロジェクター市場に一石を投じ、半導体光源を身近な存在にした。半導体光源のプロジェクター市場では、世界で73%のシェア(15年1~12月、Futuresource調べ)を獲得している。

 ただ、高度な技術を用いているほか、価格が10万円程度で、同一価格帯の水銀方式に比べ輝度が低く、エントリーモデルとしては高額であることなどが理由で、水銀から半導体に世代交代する市場変革は道なかばだ。今回発売した新製品は、WXGAタイプ5機種(エントリーシリーズで2機種、アドバンスドシリーズで3機種)、XGAタイプ3機種(同1機種、同2機種)をラインアップ。輝度は3000~3500ルーメンにパワーアップした。8機種すべてに設置自由度にすぐれた光学1.5倍ズームレンズを搭載。アドバンスドシリーズには、ワイヤレス・ディスプレイ・アダプタ(インテルWiDi/Miracastに対応した製品)やスティック端末などのHDMI端子接続型機器にプロジェクター本体から給電できるようにした。同社の半導体光源のプロジェクターは、水銀方式に比べ優位性のある部分が多い。例えば、電源オンから最短5秒で最大輝度に達するほか、電源オフもボタン一つですみやかに終了する。水銀方式の待ち時間に比べ大幅に短く、会議室用途での使い勝手がいい。また、消費電力は水銀方式の半分で、ランプ交換がほとんど不要だ。営業本部国内営業統轄部コンシューマ推進部の山本喜之・DPJ推進室室長は「エントリー製品の最も安いモデルの価格は、10万円を切り市場想定価格で9万円程度で、最も高くても14万円程度と、価格競争力がある。半導体光源のプロジェクターは、アジア、南米などオフィス環境が日本に比べ悪い国でうけている」と、今回の新製品で、国内市場に拡大する余地があることを強調する。


店舗やアミューズメントへ 市場拡大

 同社の半導体光源プロジェクターは、競合他社の水銀方式やレーザー方式に比べ、投映方向が自由だ。これらプロジェクターは、投映姿勢の制約があり、一般的に2方向までと限りがある。カシオ計算機のプロジェクターは、設置可能範囲の広い広角1.5倍ズームレンズを採用。360度設置角度の制限がなく投映でき、縦置きしてのポートレート投映、垂直設置して床や天井に投映することなどが可能だ。

山本喜之
営業本部国内営業統轄部
コンシューマ推進部
DPJ推進室室長
 山本室長は、「プロジェクターの利用範囲は拡大している。会議室の用途だけでなく、店舗やゲームなどのアミューズメントなど、さまざまに要望が増えている。店舗などの場合、通年で設置するケースが多いことからランプの交換が煩雑であったり、消費電力への要求は多い」と、同社プロジェクターは、こうした課題を解消しているという。実際、光学エンジン部への埃の進入を抑制する防じん設計であり、プロジェクターにコンテンツの入ったUSBを差したまま使えるUSB給電もあり、店舗用途などで便利だ。

 同社は、新製品の発売をうけ、店舗用途向けなどで組み込みでも、販売拡大をねらう。また、利用環境で厳しい要求のある学校などの文教向けにも販売が伸ばせると期待する。競合他社では、1500ルーメン以上の製品で、パナソニックがレーザーとLEDの光源方式の製品を出している。一方、プロジェクター市場上位のエプソンやソニー、NECなどはレーザー方式が主流だ。

新プロジェクターは、HDMI端子やUSB端子、
ビデオ入力端子などインターフェースが充実した

 各社とも、水銀ランプ方式の製品を併売中だ。カシオ計算機では、水銀ランプ方式の置き換えをねらうだけでなく、レーザー方式の領域に対しても、半導体光源の優位性を生かして、世代交代を目指す。