産業用PC大手の台湾アドバンテックは10月27日、台湾・桃園市の同社林口キャンパスで「2016 Advantech Embedded IoT Partner Summit」を開催し、グローバルのパートナー向けに同社のIoTプラットフォーム戦略を説明した。(日高彰)

 アドバンテックは、組み込み用のPCや産業オートメーション向けのハードウェアで世界的に大きなシェアを獲得しており、IoT向けにもボードコンピュータや通信モジュールなどの各種デバイスを提供している。しかし、KC・リウ(劉克振)CEOは、デバイス事業はあくまでIoTビジネスの“フェーズ1”であり、これから同社が力を入れるのは、ソフトウェアやサービスを含めたプラットフォームや、エッジコンピューティング用のソリューションなど、“フェーズ2”のIoTビジネスだと述べた。
 
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IoTの会社への生まれ変わりを強調するKC・リウCEO

 リウCEOが、「アドバンテックはまさに今年、フェーズ2への移行の準備が整った」と述べつつ紹介した戦略製品が「Edge Intelligence Server(EIS)」だ。これは、小型のサーバーに通信モジュールを搭載したもので、無線LAN、Bluetooth、シリアル通信や、産業機器の各種通信ポートを介してセンサデータを収集し、データに処理を加えてからクラウドに転送できる製品だ。

 EISのポイントは、同社のIoT向けクラウド「WISE-PaaS」と連携するためのソフトウェアが導入済みで、設置後すぐにWISE-PaaSがもつデバイス管理などの機能が利用できるほか、WISE-PaaSを仲介してAzureやBluemixといったパブリッククラウドへの接続を容易に行えることだ。名称は「Server」だが、単体のサーバーというよりも、センサとクラウドの間に入るハードウェアとソフトウェア、各種設定情報などを1パッケージにした統合ソリューションとなっている。
 
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右端が新製品の「Edge Intelligence Server(EIS)」

 また、小売り、物流、エネルギー管理、設備管理など、特定の業種・業務でよく使われる機能をWISE-PaaS上に用意し、ユーザーやパートナーが開発するアプリケーションからAPI経由で呼び出せるようにした。この仕組みを「Solution Ready Platforms(SRP)」と呼んでおり、同社では今後SRPや前出のEISのような、IoT向けプラットフォームの提供を前面に打ち出していく。さらに、サードパーティが開発したソフトウェアやサービスも、WISE-PaaSのマーケットプレイス上で販売できるようにする。リウCEOはこの戦略を「シェアリングプラットフォーム事業モデル」と呼んでおり、アドバンテックのプラットフォームを通じてユーザーやパートナーが技術やアイデアを共有し、革新的なIoTソリューションの実現を目指していく。
 
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プラットフォームを提供し、企業のIoTビジネスを支援する戦略を描く

 アドバンテックは長年、インテルのx86アーキテクチャを主に採用してきたが、近年はIoT需要の拡大に伴いARMアーキテクチャの製品も拡大しており、今年はARMベースのCPUを搭載したボードコンピュータと開発ツールをセットにした「IoTスターターキット」を発売した。今回のパートナーサミットでも、インテルに加えARMとも提携関係にあることを強調しており、ARMが「mbed」のブランドで提供するIoT向けのOSやクラウドサービスを、アドバンテックのWISE-PaaSとともに導入できるようにしていく方針だ。ARMのmbedとアドバンテックのWISE-PaaSは、ともにIoT向けのPaaSで機能的には重複する部分も多いが、mbedはよりハードウェアに近いレイヤにアクセスする機能を備えている。WISE-PaaSにmbedを組み合わせることで、ARMプロセッサの機能を使ったデータ暗号化など、デバイスのより高度な制御が可能になる。
 
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アドバンテックとARMとの提携強化を発表する両社の首脳陣

 アドバンテックは、プラットフォームではインテル、ARMの両社と提携し、クラウドではマイクロソフトおよびIBMと組むことで、IoTソリューションの実現に必要なデバイスやサービスまでをワンストップ提供する。SIer・サービス事業者などのパートナーが、IoTのアプリケーション部分の開発に専念できる環境を実現し、ともにIoTビジネスを拡大していく戦略を表明した。