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中国IT市場 2017年のキーワード“中国発”に注目

2017/01/11 09:00

週刊BCN 2017年01月02日vol.1659掲載

 本紙2~3頁では、新春恒例企画として、本紙記者がITのトレンドを分析し、ひねり出した造語「編集部が考えたキーワード2017」を紹介した。本頁では、中国IT市場の動向に特化して、2017年のトレンドとなりうるキーワードを紹介する。(真鍋 武)

中国発ソリューション

 これまでの中国企業といえば、豊富で安価な労働力、外資規制を強みに成長してきた印象がある。ITプロダクトは外資企業のアイデアをもとに現地化したものが中心で、外国メディアからは“中国版~”と紹介されることが少なくない。最近では、Uber中国版の滴滴出行、Airbnb中国版の自在客などがその一例といえる。しかし、17年はコンセプトを含めゼロから打ち出す真の“中国発”ITソリューション・サービスが誕生するかもしれない。日本でも知名度が高まってきたテンセントの「微信」やアリババグループの「支付宝」は、海外ではあまり紹介されていないが、実はすでに独特の機能・サービスを次々と開発している。

 このように考える理由は大きく分けて3つ。ひとつは、積極的な政府投資だ。中国政府は2020年までの「13次5か年計画」で、クラウド・ビッグデータ活用などのITを重要項目に掲げた。例えば、AIの領域では今後3年間の行動計画を制定し、18年までに1000億元を投資する方針を明らかにしている。

 2つめは、起業ブームだ。中国政府は「万人創業、万衆創新」を掲げ、ベンチャー企業の育成に注力している。中国国家工商行政管理総局によると、15年に新規登録した中国企業数は前年比21.5%増の443.9万社。ベンチャー企業支援のインキュベーションセンターも急増中だ。

 そして3つめは、インターネットに関する規制が十分に整備されていないこと。規制で雁字搦めにされていないので、新しい試みを行いやすい。

逆輸入ソリューション

 中国発のITソリューション・サービスを生み出すのは、中国企業だけではない。日系を含む外資企業が、中国で開発したプロダクトを、自国を含むグローバルに逆輸入して提供する動きが拡大する可能性がある。例えば、IoTの領域だ。日本では、セキュリティの観点などからプロジェクトの推進に時間がかかるケースは多いが、中国では、まずプロジェクトを始動して、スモールスタートで展開してみて随時、改良を重ねていく傾向がみられる。実際、日系ITベンダーの現地マネジメント層では、「日本以上にIoTの導入が早く進む可能性が高い」との声が少なくない。新日鉄住金軟件(上海)(NSSOL上海)の五味隆総経理は、中国発のIoTソリューションの開発に強い意欲を示している。また、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独SAPなど中国で工業インターネットの取り組みに積極投資するグローバル企業の動きもみられる。

 こうして中国国内で開発したプロダクトは、東南アジア地域などの新興国で拡販につなげやすい特徴をもつ。現状、日本のITプロダクトは海外で大成功をおさめた例は少なく、その大きな要因には過剰品質や高価な価格設定がある。一方、新興国の中国で開発したプロダクトは、同じ新興国のITニーズを満たしやすい。例えば、上海電通信息服務(ISID上海)が中国で開発したリース・ファイナンス業向け基幹システム「Lamp」は、インドネシアやタイなどでも実績が出はじめている。
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