中国売上高1兆1000億円に向け前進

【広州発】日立製作所(日立、東原敏昭 社長兼CEO)は12月1日、広州市で「広東-日立創新交流会(Hitachi Social Innovation Forum 2017 GUANGDONG)」を開催した。中国政府が進めている「中国製造2025」や「健康中国2030」など、中国社会の持続的発展に向けた課題を議論したほか、グローバルにおける日立の社会イノベーション事業の取り組みを紹介。IoTプラットフォーム「Lumada」を活用しながら、政府や企業との交流を通じた協創を加速することで新たなソリューション・価値を創出し、2018年度(19年3月期)に中国売上高を1兆1000億円に拡大する方針を示した。(上海支局 真鍋 武)

 Hitachi Social Innovation Forumは、社会イノベーション事業の拡大に向けて日立が世界各国で開催しているイベントで中国での開催は今回が初めて。広東省政府関係部門の協力を得たことで、各省庁や研究機関からの代表者や、中国の製造業、ヘルスケア関連企業など、計画を上回る約800人が参加した。日立からは東原社長兼CEOや中国総代表の小久保憲一・執行役常務らが出席した。
 
201712181531_1.jpg

東原敏昭
社長兼CEO

 日立は、中国に140社のグループ会社、4万4700人の従業員数を抱える。16年度の中国売上高は9289億円で、連結売上高全体の約10%を占める「もっとも重要な海外マーケット」(東原社長兼CEO)だ。このうち広東省では、昇降機や自動車部品などの大規模工場を抱え、中国全体の売上高の約60%を占めている。中国政府の方針に則った事業戦略を展開しており、近年では「スマート製造」や「健康養老」などをテーマに技術交流会を開催。自社の取り組みや技術力をアピールすると同時に、政府や企業との交流を通じて現地ニーズを吸い上げ、新たなソリューション創出につなげている。

 今回のイベントでは、東原社長兼CEOが約40分にわたって基調講演を行い、社会イノベーション事業の状況やグローバルでの事例などを紹介。従来のプロダクト販売を継続して拡大する一方で、スマート製造、ヘルスケア、農業、環境保護などの分野でLumadaを活用した協創に注力し、「エンドツーエンドでお客様のイノベーションパートナーになる」と意欲を示した。

 日立が掲げる「2018中国事業戦略」では、19年3月期の中国売上高1兆1000億円を目指している。為替の影響と日立物流、日立キャピタルの非連結化の影響を除けば、16年から18年度の年平均成長率は、中国のGDP成長率目標6.5%前後を上回る計画となる。

OT・IT・プロダクトで差異化
課題解決型の提案に舵を切る

 「広東-日立創新交流会」では、中国総代表の小久保憲一・執行役常務が、日本メディアのインタビューに応じた。その内容を抜粋して紹介する。

――「中国製造2020」「健康中国2030」など、政策の追い風に乗って事業を進めている。取り組みの状況は。
 
201712181531_2.jpg

小久保憲一
中国総代表
執行役常務

小久保 ヘルスケア関係では、中国政府が頭を抱えている病院の経営効率を上げる取り組みを進めている。中国の病院は非効率で、3分の診察を受けるために8時間も待つことがある。病院も収益に課題をもつ。日立は病院効率のソリューションで実績があり、これを展開したところ5件の注文をいただいた。第一号契約は広東省の中信恵州病院で、すでに稼働も開始した。待ち時間が大幅に減って患者は助かり、病院の収益も増えた。日立は収益の一部を受け取っている。

 スマート製造では、製造ラインへのIT導入はもちろん進める。例えば、広東の昇降機工場では、Lumadaを使って部品の製造工程を縮めコストを下げた。ただし、効率化だけではない。データをお客様からいただいてそれを解析し、どこに問題があるか考え、ソリューションを提供するのがLumadaだ。ついこの間まで、営業は「この製品はいいモノだから買ってください」と提案していた。そうではなく、お客様の声に耳を傾ける。今後はお客様が何に困っていて、何を解決したいのかをまずうかがい、データ解析を通じてソリューションにする。

――現時点で課題はあるか。

小久保 今は上手くいかないということはない。まだ似たことをやっている会社が少ないという事情もある。ただし、今後はそういった会社が増えて競合になる可能性はある。

 この国は、政府との関係が一番大事だ。政府方針に合うことをやる必要がある。逆に、合わないことをやるとうまくいかない。日立は、2009年に国家発展和改革委員会(発改委)と協業の覚書を結び、8年が経過した。この覚書を締結しているのは、日本の会社では日立だけだ。世界的にも、シーメンス、GE、マイクロソフトなど数社にとどまる。そういう意味では、政府が何を考えていて、何を求めているのか、わかりやすい環境にある。政府の考えを先取りして実践すれば、少なくとも、こんなことがあったのか、こんな規制ができたのか、という不測の事態は減る。

――社会イノベーションという観点では、中国がつくろうとしている雄安新区にどう関わっていくか。

小久保 雄安新区には実際に足を運んだが、まだ何もない状況だった。だが、深センだって昔は何もなかった。かなりの規模のスマートシティをつくると理解している。それにどう絡んでいくかは、これからだ。中国はスマートシティづくりに慣れてきていて、中国側でできることは彼ら自身でやるだろう。この頃は、アリババやテンセントなどのIT企業もかなり力を入れ始め、彼らが主体的に動く気がしている。だが、われわれには、彼らに足りなくて、できるところがあるはずだ。もちろん、雄安新区を外資の会社が一手に担うことはあり得ないので、基本的には、中国の会社がやるところにパートナーとして入っていく。

――中国のIT企業が急速に成長し、技術力も高まってきた。彼らをどうみているのか。

小久保 代表的なBATH。つまり、百度、アリババ、テンセント、ファーウェイの4社とは、すでに話をしている。彼らと敵対しているわけではない。実力は理解しているが、彼らには足りないところもある。競合するものではなく、お互いに話しをして、協業していこうとしている。そんな間柄だ。

 足りないものの例を挙げれば、海外展開のノウハウだ。中国政府のサポートを得て、有力な企業を買収して大きくなっていて、国内では天下無敵。しかし、彼らは海外に出るときに、どうすればいいかということで悩みをもつ。一方、日立は海外展開を本格的に始めて50年。ノウハウがある。

 また、彼らはプロダクトを製造しているわけではないし、それを運用する実績もない。一方で、日立にはそれがある。日本のメーカーで、プロダクトをつくって運用(OT)の実績がある会社はたくさんあるが、IT技術までを有するのは日立だけだ。こうしたところで差異化できる。