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共創の土壌を地方から耕す!――ふくおかクラウドアライアンス

2018/01/25 09:00

週刊BCN 2018年01月22日vol.1711掲載

FISAの地道な挑戦は実るか

 福岡県情報サービス産業協会(FISA、藤本宏文会長)の企画事業として2012年8月にスタートし、活動歴5年半を迎えた「ふくおかクラウドアライアンス」の年間セミナー受講者数が、1000人を超えた。情報サービス業の業界団体の枠を越え、ユーザー企業、地元官公庁などを巻き込んで、ユーザー側にIT活用のメリットを浸透させ、将来的な市場拡大につなげようという試みだ。同アライアンスの活動のリーダー的な存在であるFISAビジネス開発委員会の柴田健二・副委員長(麻生教育サービス取締役部長)は、「受託開発中心だったFISA会員がエンドユーザーと接点をもち、独自に成長を模索できるとともに、福岡の経済そのものがIT活用で伸びていく一助になれば」と話す。

FISAビジネス開発
委員会
柴田健二
副委員長

 ふくおかクラウドアライアンスは、FISAのビジネス開発委員会が、文字通り、会員の新しいビジネス創出のための環境づくりを模索するなかで発足した。当初は、「県の情報システム部門と連携して、会員である地元ベンダーが県の基幹システムを手がけるスキームを考えようという話が持ち上がった」(柴田副委員長)という。しかし、この構想は早々にとん挫する。多重下請け構造のなかで仕事をしている会員がほとんどで、プライムでリスクを取れるベンダーがおらず、共同受注というかたちも現実的には難しかったからだ。

 そこで、“官”のお金をあてにするのではなく、地元の中小企業に寄り添えるサービス提供を手がけていくための環境を整備していく方向に、活動をシフトした。柴田副委員長は、「ちょうどクラウドが流行り始めた頃で、ここに注力して、受託やSESへの依存から脱却を図ろうとする会員も出てきていた。しかし、クラウドは受託開発の領域とは全然違う世界。会員はやったことがないビジネスなので、どこかと組まないといけない。福岡はベンチャーや新しい技術を率先して手がけるベンダーも多く、彼らも仲間に巻き込んで、ユーザーにクラウドを中心とした先進ITのメリットを理解してもらおうと考えた。JISAの補助などを活用して、セミナーの会場費や講師料に充てられるめどもついた」と当時の状況を説明する。

 ただし、当時、FISAは発足から15年ほど経過していたが、地元の商工会など、中小企業関連の経済団体にはほとんど知られておらず、関係構築には大きな苦労が伴った。「会員が地元のシステムを受託しているケースはごくわずかだった。地元の中小企業の方々は、ITベンダーに対して、効果がないのに高額の製品を売りつけるという負のイメージを強くもっているようだった」と、柴田副委員長は振り返る。そこで、「とにかくお話をする機会をくださいということで各方面にお願いしてまわり、IT関連のセミナー講師がいないという話を聞けば、率先して手弁当で協力するようにした。また、クラウドビジネスやIoT、ビッグデータ、セキュリティ関連など、旬で重要なトレンドの専門家ともパイプをつくり、そうした講師の話が聞ける機会を増やしていった」という。結果として、「われわれのかかわるセミナーに対して、ここにくれば何かわかる、何か得られると評価していただき、業界として信頼される下地が形成されていった」と、手応えを語る。

 15年からは、商工会議所の経営指導員向けのITセミナーなどにも活動の場を広げ、ここで一気に受講者が増えた。現在では、さまざまな産業分野とのパイプができ、セミナーをきっかけに、ふくおかクラウドアライアンスとユーザーの共創による新たなソリューション開発につながる事例も出てきているという。柴田副委員長は、「われわれのビジネスにとっても、中小企業のIT活用にとっても、出会いの機会がいかに大事かということを実感している」として、活動のさらなる活発化を図る考えだ。(本多和幸)
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