【ラスベガス発】米IBMのビジネスパートナー向け年次イベント「PartnerWorld at Think 2018」は、顧客向けイベント「Think 2018」と併催されるかたちで3月19日からの4日間、米ラスベガスで開催された。世界中のIBMビジネスパートナーの幹部を対象にした事業方針説明会では、クラウドやAIを軸とする「次世代エコシステム」の推進を主要なテーマと位置づけた。IBMの事業ポートフォリオが大きく変化するなか、ビジネスパートナーとのエコシステムの再構築がIBMの大きな経営課題であることを印象づけた格好だ。

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米IBMのジョン・テルシュ・ゼネラルマネージャー

 「PartnerWorld at Think 2018」の基調講演で登壇した米IBMのジョン・テルシュ・ゼネラルマネージャーは、開口一番に「パートナー各社が成長できる次世代のエコシステムの構築を推進していく」と宣言した。テルシュ氏は、パートナービジネスを統括する立場にあり、パートナー経由でのビジネス拡大の責任を負っている。

 次世代エコシステムの軸となるのは、AI技術のWatsonやIBMクラウドを活用したビジネスの拡大である。基調講演には数社のIBMビジネスパートナーが壇上に招かれたが、各社ともデジタル・トランスフォーメーション(DX)をどのように推進していくべきなのかのプレゼンテーションを行った。IBMからパートナーに向けて提供される技術サポートや営業支援などのインセンティブは、従来の製品販売モデルから、AIやクラウドを活用したDXビジネスに焦点をあてたものに変化している。
 
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米IBMのマーティン・シュロター上級副社長

 米IBMでグローバル市場を担当するマーティン・シュロター上級副社長は、「売る相手が大きく変わっている」と指摘。IBMの見方によれば、企業内のDX推進役の60%はすでにIT部門ではなくなっており、IT予算についても51%は事業部門がもっているという。また、「72%の経営者は、すぐれた業種ノウハウをもつITパートナーと次世代のシステムを構築していきたいと望んでいる」(シュロター上級副社長)と分析している。

 つまり、ユーザー企業におけるDX推進役は、経営トップやマーケティング担当役員といった“非IT部門”が多くなり、それに伴ってIT予算もIT部門ではない事業部門などが握る割合が増えている。顧客企業の情報システム部門にIBM製品を納入するスタイルが従来型だとすれば、これからは顧客の経営層や事業部門のデジタル需要に、IBMのAIやクラウドを駆使して応えていくスタイルの割合が高まる。取り扱う商材だけでなく、「売る相手」も大きく変わっているわけだ。

 IBM自身も、こうした顧客ニーズの変化に合わせてトランスフォーメーション(転換)を敢行しており、IBMビジネスパートナーにも、こうした転換を促していくことで、次世代につながるエコシステムの再構築に力を入れていく。
 

米IBMが考える次世代エコシステムとは
パートナービジネス担当副社長に聞く

──米IBM本社でグローバルのパートナービジネスを担当されているデイビッド・ウイルソン副社長は、IBMの次世代エコシステムをどのように考えておられますか。
 
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デイビッド・ウイルソン
副社長

 ユーザー企業が使っている業務システムにWatsonを組み込んで、よりスマートにするビジネスは、今後、一段と大きくなっていきます。ビジネスパートナーが、こうしたビジネスをスムーズに手がけられるよう、IBMはクラウド基盤であったり、データ保護の仕組み、情報セキュリティの面で支援していく。これがパートナーとの次世代エコシステムの姿です。

──国内では、メーカーとしてのIBM製品の品揃えが大きく変わったため販社のビジネスが伸び悩んだり、IBM製品のVAD(付加価値ディストリビュータ)の再編が起こっています。

 オンプレミス(客先設置)型のビジネスのことは、私もよく理解しているつもりです。ただ、今はクラウドの特性を最大限に生かして、ユーザーがデジタル時代に勝ち残っていけるようにすることが、ビジネスパートナーにとっても、当社にとってもメリットが大きい。ビジネスパートナーであるSIerの強みは、顧客が属する業種や、業務のノウハウを熟知していることです。オンプレミスからクラウド、AIへと商材が変わることで、この強みをより伸ばしていくことができる。

──企業ITにおいてデジタル化が進んでいる国や地域はどこでしょう。

 個人的な見方ですが、正直、日本と北米、欧州、アジア諸国のデジタルへの切り替え具合はほぼ同じ。有意な差はみられないので、ビジネスとしてはむしろこれからが本番。ただ、欧州のなかでも北欧だけは、頭一つ抜きん出ているように思いますね。地域特性として、モバイルやクラウドの活用に積極的というのが、その理由です。

──SIerからみて、IBMをビジネスパートナーとして選ぶ理由はなんですか。

 クラウドやAIを開発するベンダーは数多くありますが、企業ITの中枢である基幹業務システムの構築実績をIBMほどの規模で有している会社は他にありません。企業のデータ保護やセキュリティの考え方は、一般消費者向けのサービスとは大きく異なります。企業ITでは、重要データを他の企業のデータと混ぜたりはしませんが、個人向けのサービスは割とそれがあるようです。クラウドやAIの活用の仕方も、自ずと違ってきます。

 パートナーの業種・業務のノウハウと、IBMが長年にわたって積み上げてきた基幹業務システムの技術力、それとクラウド/AIを組み合わせる。これによって次世代のエコシステムを本格的に立ち上げることで顧客企業、ビジネスパートナー、当社のビジネスが一段と拡大します。