アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は8月19日、調査リポート「クラウドへの移行による、アジア太平洋地域での二酸化炭素排出削減の実現」を発表した。日本の企業や公共機関が業務システムをオンプレミスからクラウドに移行した場合の効果にも言及し、エネルギー消費量とそれに付随する二酸化炭素(CO2)排出量を約77%削減できるとした。
調査は、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス傘下の調査会社である451 Researchが実施した。調査対象は、アジア太平洋(APAC)地域5カ国(オーストラリア、インド、日本、シンガポール、韓国)に所在する約500の企業(年間売上高1000万~10億米ドル)と公共機関で、日本では100の企業や団体から回答を得た。
ケリー・モーガン氏
(AWSジャパン提供)
記者説明会で451Researchのケリー・モーガン・データセンターサービス/インフラストラクチャ担当リサーチディレクターは、データセンター(DC)内のサーバーの一般的な使用期間(平均月数)は日本が51カ月と5カ国中で最も長いことを紹介し「全体的なサーバー利用のコストは下がり、無駄がないと言えるかもしれないが、サーバーは古くなればなるほどエネルギー効率は下がっていく」と指摘した。
その上で、日本全体の状況について「サーバーのライフサイクルが長い」「新しいサーバープラットフォームの導入が遅い」「平均的にサーバークラスターが古い」「韓国やインドなどに比べると仮想化率が低い」の4点を挙げ、「日本のITエネルギー効率は、APACの平均を下回っている」との調査結果を示した。
報告書ではAWSのようなハイパースケーラーのクラウドインフラについて、サーバーのエネルギー効率や稼働率、DCの電力系や冷却の効率性が高いことなどから、一般的なオンプレミスの環境と比べてエネルギー使用量を大幅に削減できると指摘。日本でも、オンプレミス環境で年間1メガワット分の電力を消費するITワークロード(サーバー2000~4000台に相当)をクラウドに移行した場合、平均1885トンのCO2排出量を削減可能だという試算結果を発表した。さらに、クラウドサービスプロバイダーが100%再生可能エネルギーを利用できるようになれば、削減量はさらに493トン上乗せできるとした。
ケン・ハイグ氏
(AWSジャパン提供)
説明会には、米AWSでアジア太平洋地域と日本のエネルギー政策責任者を務めるケン・ハイグ氏も登壇。「われわれは、2019年に発表した『気候変動対策に関する誓約(The Climate Pledge)』で、40年までにCO2排出量を実質ゼロにすることを目指している」とし、さらに「25年までに、事業で必要な電力を100%再生可能エネルギーで賄うべく歩みを進めている」と話した。(齋藤秀平)