アマゾンウェブサービスジャパン(AWSジャパン)は、ソフト開発ベンダーと販売パートナーの関係強化を支援する「コンサルティングパートナー・プライベートオファー(CPPO)」プログラムの普及に力を入れる。同プログラムは、業務アプリなどの開発元ベンダーが、SIerなどAWS関連商材の売り手に向けて、個別の仕切り価格を提示することで、売り手の販売意欲を高める仕組み。国内ではクラウドインテグレーターのクラスメソッドなど数社がCPPOを活用したシステム構築(SI)に取り組んでいる。(安藤章司)
CPPOは、AWSジャパンが運営する公式マーケットプレイスの関連サービスで、AWS上で稼働可能な業務アプリや各種ツールの開発元が、SIerなどの売り手に向けて独自の価格を設定できるプログラム。マーケットプレイスには、いわゆる“定価”に相当する価格(パブリックオファー)が表示されているが、これとは別にCPPOを活用することで、開発元は売り手に向けて“仕切り値”や“卸値”に相当するプライベートオファーを提示することが可能になる。
開発元にとってみれば、売り手との関係が強まり、より積極的に売ってもらえることが期待できる。一方、売り手から見れば、ライセンス料の売買差益を得られるメリットがある。また、買い手であるユーザー企業から見ても、売り手のSIerなどから当該ソフトウェア製品のサポートを得られる安心感が得られる。AWSジャパンの竹部智実・AWS Marketplace事業開発マネージャーは、「作り手、売り手、買い手の三者にメリットがあるのがCPPO」と胸を張る。
クラスメソッド 佐々木大輔 取締役
マーケットプレイスには、これまで本国米国に法人を置くベンダーしか出品できなかったが、2020年9月からは国内ベンダーが自由に出品できるようになった。国内ベンダーのマーケットプレイスへの出品が本格化したのは、実質的に昨年9月からで、CPPOもそれに伴って本格的にスタート。国内で最も早いタイミングでCPPOを活用したSIビジネスを始めたクラスメソッドの佐々木大輔・取締役 AWS事業本部本部長は、「CPPOを使うことでユーザーサポートがより確実にできるようになる」と話す。
ユーザー企業がマーケットプレイスから直接購入した場合、SIを担うSIerは開発元と何ら接点がないためサポートが難しい。サポートが必要な場合はSIerが開発元と直接契約を結んで販売することになるが、そうなるとAWSの商流から切り離され、マーケットプレイスの機能として実装されている従量課金の仕組みが使えなかったり、AWS関連の請求書をまとめてユーザーに送付する「一括請求サービス」ともそぐわなくなる課題があった。CPPOを使うことで「AWSと同様の明朗な従量課金で、AWS関連商材と一括で請求でき、ユーザー企業にとって分かりやすい料金体系となる」(クラスメソッドの行部康宏・AWS事業本部パートナーアライアンス部シニアマネージャー)とメリットを指摘する。
クラスメソッド 行部康宏 シニアマネージャー
直近でCPPOを活用している国内の売り手はクラスメソッドのほかにネットワンシステムズ、アクセンチュアなど数社。AWSジャパンでは、CPPOの仕組みを広く国内の開発元やAWSビジネスパートナーに認知してもらうことで、CPPOを活用する売り手を増やすとともに、CPPOに対応した国内マーケットプレイス製品も順次拡充していく。