弥生は10月14日、事業概況説明会を開き、小規模事業者の困りごとをトータルで支援する「事業コンシェルジュ」を目指す方針を示した。弥生シリーズや記帳代行支援サービスを中心とした業務支援サービスに加え、今後は起業から事業承継までの各ステップを一貫して支える事業支援サービスも強化する。
岡本浩一郎社長
同社の岡本浩一郎社長は、2021年度(20年10月~21年9月)の弥生シリーズの登録ユーザー数が前年度比32万7000増の253万5000と引き続き順調に成長していることを示し「デスクトップアプリとクラウドアプリが両輪となってお客様が増えている」と説明した。ユーザーの状況については、個人事業主の間ではクラウドアプリが浸透し、特に新規ユーザーがクラウドアプリを利用するケースが増えているとした一方で、法人ではデスクトップアプリの利用が一般的と補足した。
その上で、デスクトップアプリが業務ソフト市場で65.5%のシェア(第三者による市場調査をもとに同社が独自集計)を獲得していることも示し、デスクトップアプリの最新バージョンとして、新たに「弥生22シリーズ」を10月22日に発売すると発表した。主な強化ポイントとしては、SMART(自動取込自動仕訳)の推論強化や、国税庁が提供する「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア」(年調ソフト)との連携などを挙げた。
会計事務所の記帳代行業務を自動化・効率化する「記帳代行支援サービス」については、提供を開始から丸1年となった先月末時点で、有償で契約する会計事務所の数が552に達し、8977件の顧問先向けに活用されていると紹介した。
業務支援サービスの軸となる弥生シリーズや記帳代行支援サービスのビジネスは順調に拡大しているものの、岡本社長は「それだけでは(小規模事業者への支援は)足りない」とし、今後の注力領域とする事業支援サービスについて「多くの事業者に関する知見やデータ、そして全国1万1000以上の会計事務所パートナー(弥生PAP会員)を組み合わせることで、小規模事業者のニーズに応えられるサービスが提供できる」と話した。
事業支援サービスでは、今年3月に企業・開業ナビの提供を始めている。第二弾として、「資金調達手段を検索」「資金調達を学ぶ」「専門家に相談」の三つのコンテンツを提供する「資金調達ナビ」のリリースを来月に予定していることを明らかにした。特徴については「資金調達というと、銀行からお金を借りるというところに思いがいきがちだが、重要な資金調達手段として行政などからの補助金もあり、これらを横ぐしで検索することができる」などと語った。
このほか、今年12月に「税理士紹介ナビ」、来年に「事業継承ナビ」をリリースする予定も示し「従来の弥生は、とにかく事業者向けの業務ソフトを提供するところにフォーカスが当たりがちだったが、現在は事業者だけではなく、会計事務所のお手伝いもしており、なおかつ事業の支援という部分にも取り組んでいるということをぜひ理解してもらいたい」と力を込めた。
一方、スモールビジネスの業務デジタル化に向けた取り組みについても言及し「紙を電子化することは進んでいるが、業務の在り方を変えるところまで踏み込んでいないのが現状。(デジタル化によって)業務の在り方を変えない限り、事業者は楽にならない」と指摘。さらに、来年1月からの電子帳簿保存法改正については「中身をいろいろと考えたが、『これって電子化だよね』というのがわれわれの結論だ」との認識を示した。
同社はデジタル化を進めていく上で、証憑(しょうひょう)をデジタルデータとして送付・受領・保存し、後続業務を自動化する「証憑管理サービス(仮称)」を中核にする考え。岡本社長は、サービスによって「さまざまな証憑を構造化したデジタルデータとして扱えるようにしていく。そして、これをインボイス制度に活用し、改正電帳法にも活用していく」とつけ加えた。証憑管理サービス(仮称)は、来春のリリースを予定しており、AI-OCRなどの機能を順次追加し、段階的に電子インボイスに対応させるとした。(齋藤秀平)