日本マイクロソフトは3月15日、製造業向けの取り組みに関する説明会を開いた。昨年10月の組織改編で新たに設置し、素材から完成品まで一貫してサポートする「エンタープライズ製造事業本部」の役割について説明し、グローバルで提唱する「デジタル・フィードバック・ループ」の構築支援など、三つの柱で製造業のDXを推進する考えを示した。
同事業本部は、各産業を横断的に管轄していた「エンタープライズ事業本部」の分割によって誕生した。製造業の顧客全てを対象とし、製品やサービスを提供するだけでなく、ビジネスの構築やスキルアップの支援も担う。
デジタル・フィードバック・ループは、顧客と業務、社員、製品の4領域で横断的にデータを活用し、組織全体で変革を目指すことを定めた概念。製造業の領域では、個別最適化されたシステムからのデータの開放などを進める。
渡辺宣彦 執行役員
このほか、「新しい製品・サービスのアジャイル開発支援」や「従業員のデジタル武装、DXスキル獲得支援」も柱と位置づけており、エンタープライズ製造事業本部の渡辺宣彦・執行役員常務事業本部長は「製造業のDXをしっかり支援し、顧客とともに加速させていく」と力を込めた。
製造業は、日本の経済を支える大きな柱になっている一方、競争力が問われているとの見方もある。製造営業統括本部の横井伸好・業務執行役員本部長は、世界経済フォーラムが認定する先進的な約90の工場のうち、日本の工場は二つにとどまっていることなどを挙げ「(日本の製造業は)残念ながら世界のデジタル化をけん引している状況ではないと言わざるを得ない」と指摘した。
その上で、世界中の製造業の顧客を支援する中で培ったノウハウや知見▽それを支える技術力▽「Surface」などのハードウェアの製造を通じて得たDXの経験―の三つが顧客に提供できる価値と説明。従業員の働き方や顧客との関係、工場、サプライチェーン、イノベーション、セキュリティ、データ活用の各エリアで顧客の支援を強化するとした。
説明会ではこのほか、ソニーとリコー、コマツ産機、旭化成の4社が、マイクロソフトとともに進めたDX関連の事例を紹介した。
(齋藤秀平)