NTTとNTTデータは5月9日、NTTグループの海外事業を統合すると発表した。今年10月にグループのグローバル事業を統括する持株会社NTTインクを母体に、NTTデータが55%、NTTが45%を出資する海外事業会社を設立し、戦略・実務面での連携を進めて海外でのさらなる成長を狙う。
NTTの澤田純社長(左)とNTTデータの本間洋社長
会見でNTTの澤田純社長は、NTTグループの海外事業の状況について、2018年度に3.2%だった営業利益率が21年度は6%を超えるまで伸長するとの見通しを示し「23年度の中期財務目標の7%は射程に入っている」と述べた。
その上で、さらなる事業拡大に向けて「お客様のニーズが多様化・高度化しているほか、社会・テクノロジーも変化しており、グローバルレベルでダイナミックな環境変化に対応していく必要がある」と説明し、グローバルガバナンスと、ビジネスユーザー向けの事業能力の強化を目指す考えを示した。
NTTグループの海外ビジネスユーザー向けの事業は、NTTインクの傘下で、NTTデータと、データセンターやネットワーク、マネージドサービスなどを提供するNTTリミテッドが展開している。
今回の事業統合では、海外事業会社とNTTリミテッドをNTTデータ傘下に移管し、海外事業を集約する。NTTデータが得意とするコンサルティングやアプリケーション開発などに、NTTリミテッドが強みとする高付加価値サービスを融合させ、データ活用ビジネスの高度化を図るほか、5G/IoT、スマート関連ビジネスの創出・拡大を進める。長期的にはNTTのIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)技術を活用したサービスの展開も目指す。
新しい海外事業会社は、売上高約3兆5000億円、従業員数約18万人の規模となり、海外売上高比率は約60%になる見通し。社名は現時点では未定。海外事業会社を設立した後、NTTデータは新たに国内事業会社を設立する。23年7月以降は持株会社化したNTTデータの傘下に海外と国内の両事業会社を配置することを計画している。
NTTとNTTデータの協議は、昨年春ごろから事務レベルで開始し、NTTデータがNTTに提案書を提出した同年9月から本格化した。その後、両社で海外事業の価値を評価する第三者機関を設立するなどして事業統合の方向性を議論してきた。
NTTデータの本間洋社長は「お客様のビジネスや業務を深く理解し、高度な技術力でシステムを作り上げる力」を中心に、これまで顧客の成長や社会課題の解決に貢献してきたと説明し、「当社が持っている作る力にNTTリミテッドのつなぐ力を組み合わせることで、新たな競争優位性を獲得し、お客様や社会に新しい価値を提供していく」と意気込みを語った。(齋藤秀平)