米IBMとRapidus(ラピダス)は12月13日、半導体の研究開発力の発展のため戦略的パートナーシップを締結したと発表した。半導体の研究・設計におけるIBMの知見を活用し、2nmノード半導体の開発を両社共同で推進する方針。Rapidusは、2020年代後半に国内の製造拠点で2nmノード半導体の量産開始を目指しており、これに向けた製品化のスピードと競争力の向上を目指す。また、パートナーシップの一環として、Rapidusの研究者と技術者が米IBMおよび日本IBMの研究者と協働し、技術の習得を図る。
(大向琴音)
Rapidusは、日本の主要メーカーなどが出資して22年8月に設立された企業で、先端ロジック半導体に関する研究開発や設計、製造、販売などの事業を展開するとしている。一方のIBMは、21年に世界初となる2nmノード半導体の開発技術を発表したが、量産技術を打ち立てるのはこれからだ。現在、日本と米国はともに5nmおよびそれより微細な半導体の生産能力を有していないことが課題となっている。両社は今回のパートナーシップについて、グローバルな協業を通じた持続可能なサプライチェーンの構築が目的だとしている。将来的に2nmノードの半導体製造技術をRapidusの国内製造拠点に導入することで、半導体の生産能力に関する地政学的なリスクを分散させる形だ。
今回のパートナーシップでは、Rapidusの研究者と技術者が、世界最先端の半導体研究拠点の一つである米ニューヨーク州アルバニーのAlbany NanoTech Complexで技術を学び、習得する。同拠点では、IBMのほかApplied Materials、サムスン電子、東京エレクトロン、SCREEN、JSR、ニューヨーク州立大学が研究を行っており、Rapidusもこのエコシステムに参画することになる。さらに、技術を日本に持ち帰った後は、20年代後半の2nmノード半導体量産に向けて、設計、フロントエンド工程、バックエンド工程のすべてでスピードを備えた工場を国内に作る計画だ。
米IBM ダリオ・ギル シニアバイスプレジデント IBM Researchディレクター
米IBMのダリオ・ギル・シニアバイスプレジデントIBM Researchディレクターは「IBMは半導体産業において、日本と長い間パートナーシップを築いてきた。日本は、装置や材料に大きな強みを持ち、科学技術の面でも素晴らしい能力を持っている。日本にはプロジェクトを成功させるために必要なすべての要素が揃っていると考えている」と述べた。
Rapidus 小池淳義 社長
Rapidusの小池淳義社長は「世界に本当に貢献できる半導体を作るには、やはりお互いの信頼が一番大切だと考えており、互いに信じあってプロジェクトを成功させようという熱意を感じている。今日は日本の産業界、半導体業界はもちろんのこと、米国や世界の人たちにとっても忘れられない日となるだろう」と語った。
IBMが発表した2nmノード半導体のテストチップは、現在同社が提供する7nmのチップと比べて45%の性能向上を実現し、同性能であれば消費電力を75%削減できるほか、指の爪サイズのチップに最大500億個のトランジスタを搭載できるようになるという。これを実現するのはIBMが「ナノシート技術」と呼ぶ次世代のトランジスタ技術で、静電特性の改善と高性能化、低消費電力が期待できる。