米A10 Networks(A10ネットワークス)のドゥルパド・トリベディ社長兼CEOと日本法人の川口亨社長は、週刊BCNの取材に応じ、直近のビジネス状況や戦略について説明した。グローバル売上高の約3割を日本法人が占めるなど、国内ビジネスが好調に推移していることを明らかにし、「日本は重要なリージョンだ。高品質で高機能な製品を求める顧客が多い日本市場で成功すればどこでも成功できると考えている。引き続きパートナーを中心に積極的に投資していく」(トリベディ社長)と力を込めた。
左からマット・ブルーニング常務副社長、
ドゥルパド・トリベディ社長兼CEO、
日本法人の川口亨社長
同社は、アプリケーション配信コントローラー(ADC)やセキュリティ製品を中核に事業展開している。2022年度のグローバル売上高は前年度比12.1%増の2億8033万ドルで過去最高を更新、顧客数も7000社を突破したという。企業のクラウド移行が進む中で、マルチクラウドやハイブリット環境での製品利用が進んだことや、サイバー攻撃の拡大により企業のセキュリティ意識が高まったことなどが成長要因となった。
日本法人の売上高は公表していないものの、グローバル同様に高い成長率になっているとした。川口社長は「創業当初は、大手キャリアなどサービスプロバイダーへの提供が中心だったが、15年頃からエンタープライズや官公庁などへのアプローチを本格的に開始した。近年はその成果が出てきており顧客層が広がっている」と説明した。
国内のビジネスは全て間接販売で進めており、パートナー戦略を重視している。例えば、製品導入のエンジニアチームとサポートチームを一体化させ、パートナーからの問い合わせや要望に対して円滑に対応できる体制の確立や、地場SIerとの対面機会を増やして関係強化を図り、地方自治体への営業を推進するといった活動を展開している。販売サポート体制の強化やトレーニングによる技術支援にも注力する方針で、米本社のマット・ブルーニング・ワールドワイドセールス・マーケティング常務副社長は「パートナーの見識や知見を基に、お客様にさらに貢献できる仕組みを作っていきたい」と展望した。
今後はインフラとセキュリティを注力領域に位置付けて、取り組みを強化する。インフラでは、マルチクラウドやハイブリット環境に合わせたソリューションの拡大や、使用量に基づく価格モデルの設定を進める。セキュリティでは、強みであるDDoS攻撃対策製品の機能拡充を進めるほか、ふるまい検知や機械学習を使い巧妙化するサイバー攻撃への対応を強化するとした。5Gを利用したビジネスを開始する企業が増えていることから、5G環境向けのセキュリティ製品の提供にも取り組んでいく考えだ。
(岩田晃久)