リコーと東芝テックは、複合機やプリンタの生産を担う合弁会社を本年度第1四半期(2023年4~6月期)中に立ち上げる。出資比率はリコーが85%、東芝テックが15%。複合機やプリンタのエンジンを合弁会社が開発・生産することで共通化を図る一方、制御ソフトや操作パネルなどのインターフェースは個別に手がけ、製品としての独自性を打ち出す。共通エンジンの開発には数年かかると見られ、両社の工場の再編や人員の再配置などを今後詰める。販売については従来通り個別に行う。
リコー 山下良則 会長
両社が歩み寄った背景には、コロナ禍で業務のデジタル化やペーパーレス化の勢いが増し、「世界市場全体で見て複合機のプリントボリュームの減少傾向が続く」(リコーの山下良則会長)との危機感がある。エンジン共通化によってコスト削減を図り、収益力や競争力の維持を図る。リコーはオフィス市場でシェアを持ち、東芝テックは流通・小売業や製造業に強く、主力の複合機で競合する部分が少ないことも後押しした。
リコーの大山晃社長(右)と東芝テックの錦織弘信社長
東芝テックの錦織弘信社長は「コロナ禍を経て事業環境が変わったという共通認識は業界全体であっても、実際に(構造改革を)実行に移せるかは別の話」とし、リコーの山下会長との話し合いで実効性ある行動を起こせると判断したことが今回の合弁会社の立ち上げにつながったという。リコーとは複合機やプリンタの一部部品を東芝テックに供給するなどの取引関係はあったが、エンジンの共通化まで踏み込んだ業務提携は今回が初めて。
合弁会社では、省エネで使いやすい小型の共通エンジンの開発を念頭に置くとともに、「他社から採用したいと声がかかったら供給することも視野に入れる」(リコーの大山晃社長)と、供給先を増やすことで一層の競争力の向上を目指す。また、リコーのカメラやプロジェクターなどの光学、画像処理技術と、東芝テックのバーコードプリンタや無線タグを活用した自動認識技術を持ち寄ることで新規商材の共同開発にも取り組む。
リコーの山下会長は「優れたハード製品を世の中に出せばシェアが伸びるという数十年前の世界とは違う」と指摘。複合機やプリンタ、PFUのドキュメントスキャナなどを「エッジデバイス」と位置づけ、それぞれを束ねる独自のプラットフォームを構築。その上に業務アプリケーションやサービスを展開するビジネスを重要視する。
東芝テックは、全世界で自社製複合機約140万台が稼働している。また、調査会社のRBRによればPOSレジの稼働台数は約314万台で世界トップ、国内シェアは約5割を誇る。デバイスから得られたデータを起点としたソリューションビジネスに注力し、25年までに国内外のソフト開発人材を今の1.3倍に相当する1800人に増やす方針。両社とも中核となるハード製品のコスト競争力を高めながら、ITソリューションで付加価値を高める戦略を展開する点でも一致している。
(安藤章司)